ギネス世界記録のV8エンジン パガーニ・ゾンダ ケーニグセグCCXR(2) 400km/hへ誘う怪力!
公開 : 2024.11.03 17:46
BBCトップギアでコースレコードを記録
ドアの開き方はエレガント。サイドのエアインテーク内に隠れたボタンを押すと、ディヘドラル・ドアが回転するように上方へ立ち上がる。カーボン製サイドシルは幅が広いものの、乗り降りはしやすい。
フロントガラスは、グループCカーのように横までカーブを描く。長いワイパーが1本中央に立ち、最新F1マシンのコクピットからの視界にも似ている。
ダッシュボードの様子は、淡白でメカニカル。メーターパネルやコラムレバー、中央側のパネル、シフトレバーなどはアイボリーに染められ、幾何学的で、滑らかなスタイリングとは一致しない。見惚れるような、パガーニの雰囲気とも異なる。
人間工学的には良好。シンプルなレイアウトで、短時間で車内へ馴染める。
このCCXRは、BBCのトップギアで7年間破られないコースレコードを記録した。ドライバーのスティッグが刻んだタイムは、1分17秒6だった。筆者が運転し、軽く路面が湿っている今日は、そのタイムへ近づくことは到底不可能だが。
運転体験は、ゾンダ S ロードスターとまったく異なる。乾燥重量は1280kgと大きく違わないが、走りはより落ち着いている。一方でエンジン音は、アイドリング時から荒々しい。操縦系へ伝わる振動が大きく、ちょっとマッスルカーっぽい。
技術的にも空気力学的にも偉業といえる水準
アクセルペダルのストロークは、想像以上に短い。右足へ力を込めれば、即座に宇宙船の様相だ。
0-161km/hの加速時間は6.4秒と、ゾンダ Sより0.6秒鋭い。本領を発揮したCCXR エディションは、カンナム・レーシングカー的なワイルドさで突進していく。猛烈なパワー感は、表現が難しい。
アクセルペダルの角度を僅かに増やすだけで、推進力が明確に上昇する。ストレートでも、若干不安定さが滲むほど。一方で、249km/h時のダウンフォースは350kgもあり、超高速域での巡航は感心するほど落ち着いている。
カーブでは、ゾンダ Sとは異なりアンダーステア。しかし、オーバーステアへの推移は予想しやすい。急に手のひらを返されることはないようだ。
最高出力は、ガソリンでも270ps以上高い。CCXRで加速を続ければ、400km/hの速度域へドライバーを誘う。技術的にも空気力学的にも、偉業といえる水準にあることは間違いないだろう。
21世紀の初頭に生み出された、2台のハイパーカー。世界の違う価格は抜きにして、もし筆者がどちらかを選ぶなら、複層的で芸術的な特別さを好むだろう。カーボンファイバーの織り目1つまで魅了される、ゾンダ Sのように。
協力:ジョー・マカリ社、ウィル・ストーン社、ダンスフォールド・パーク社