【電動化フラッグシップ】 新型V12『レヴエルト』にランボルギーニのプライドを見た!

公開 : 2024.10.18 11:45

日常域でのマナーは劇的に改善

まずは市街地モードで早朝の都心を撮影現場へと向かう。音もなく走るレヴエルトの車室空間は、エクステリアの印象を覆すように異世界的だ。スイッチ類も一新され、よりバイク的になったところで、普通にDシェイプのステアリング形状がむしろ物足りなくみえてしまう。

アヴェンタドールから干支ひと回りは設計年次が若いと考えれば当たり前の話かもしれないが、日常域でのマナーは劇的に改善されている。乗り心地の良さはダンピングやマウント類の適性に加えて、タイヤ銘柄の縦バネ特性も好作用しているように窺えた。

日常域でのマナーが劇的に改善されていると、レポーターの渡辺敏史。
日常域でのマナーが劇的に改善されていると、レポーターの渡辺敏史。    田中秀宣

そしてエンジン音のないモーター走行時に伝わってくるのは、どうやら凹凸の突き上げや小石の巻き上げにまつわるロードノイズにさえ配慮がなされているのではないかということだ。単に速いというだけではなく、快適性にも一定の配慮がなされているというところに、レヴエルトがランボルギーニのシグネチャーたる所以が垣間見える。

速度域が高まれどGT的な柔軟性が削がれていくことはない。稼働するエンジンはしずしずと回り、変速も当然ながら滑らかだ。フロントセクションもカーボン化されたシャシーは不快な共振もなく、むしろしなやかにも感じさせてくれる。ランボルギーニの強面なイメージを支持する向きに対して、この洗練ぶりには物足りなさを覚えるのではと、ちょっと心配になるほどだ。

そのぶん、ということだろう。ANIMAの設定による性格の違いは従来以上にメリハリがつけられている。エンジンも積極的に稼働するスポーツモードでは足回りが明確に引き締まり、変速も積極的に高回転側を捕まえるなど、パドルを使わずともアグレッシブな走りに充分応えてくれる。

コルサ&パフォーマンスモードの全開は強烈

スポーツモードで印象的なのは前軸の差動によるベクタリング効果で、たとえば高速に出入りするループでもはっきりと体感出来るほどの旋回力が加えられていることだ。峠道をオンザレールでキビキビと駆け抜けるような場面を想定してのセットアップなのだろう。

実際、首都高のような幅狭な屈曲路でもぐんぐんとアペックスに巻き付いていくような挙動によって、車体の大きさや車重が気にならない。逆にコルサでは積極的なベクタリング効果よりも全輪駆動的なスタビリティが優先され、ニュートラル指向の運動性になることは先のサーキット試乗で確認できた。このハンドリングにまつわる考え方は、ホンダNSXや、フェラーリSF90ストラダーレといった前軸2モーターのモデルとも共通している。

品質においても走りにおいても、相当に詰めた仕上がりであることが伝わってくるレヴエルト。
品質においても走りにおいても、相当に詰めた仕上がりであることが伝わってくるレヴエルト。    田中秀宣

コルサ&パフォーマンスモードでの全開は思わず息を呑む強烈なものだ。スペックに疑いの余地はない。もはや公道での使用は憚られる領域だが、加速中でも多少の凹凸をものともせずサスがしっかり追従してくれるので、しっかり接地しているという安心感がある。エンジンはL539世代に対して回転フィールも一段と滑らかになっただけでなく、9000rpmオーバーまでパワーをしっかり乗せつつ、整った高音を聴かせてくれる。

レヴエルトの完成度はかなりのもので、この先のリファインの余地が想像できないほど隙がない。これぞフラッグシップのプライドということか、前例のないメカニズムを搭載しながら、品質においても走りにおいても相当に詰めた仕上がりであることが伝わってくる。ランボルギーニの新章は、晴れ晴れしい幕開けになったといっていいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    田中秀宣

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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