乗り手を覚醒させる傑作揃い! アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 3台比較(1)

公開 : 2024.11.02 09:45

歴代最強の665psで更新されたヴァンテージ 遠くから気分を高揚させる姿 ペダルとステアリングが超絶に融合した911 躍動的なV8エンジンを宿す壮大なローマ 英編集部が3台を比較

離れていても気分を高揚させるヴァンテージ

英国では、フェラーリ・ローマの広報車両を手配するのが難しい。試乗できる1台を、時間をかけて探した。予定日まで1週間を切った頃、英国編集部へ待望の電話が入った。

届けられたのは、アブダビ・ブルーに塗られた真新しい車両。純正仕様のミシュラン・タイヤを履いている。協力していただいた、ロブ・バーネット氏へ感謝したい。

シルバーのアストン マーティン・ヴァンテージと、アブダビ・ブルーのフェラーリ・ローマ、グレーのポルシェ911ターボS
シルバーのアストン マーティン・ヴァンテージと、アブダビ・ブルーのフェラーリ・ローマ、グレーのポルシェ911ターボS

今回の比較で、ローマは不可欠だった。公道での楽しさや安楽さと、アウトバーンでの300km/h超の能力を兼ね備えている。812スーパーファスト以上の称賛は得ていなくても、2024年で最も完成度の高いフェラーリだ。

ナイフのようにスリークなフォルムのローマへ立ち向かうのは、最新のアストン マーティン・ヴァンテージ。2024年にアップデートを受け、665psの最高出力を得ている。

シルバーのボディにゴールドのホイール、グリーンの内装というコーディネートは、見事に妖艶。30m離れていても、気分を高揚させる。誇張されたマフラーが見えない角度でも、引き締まった筋肉質なスタイリングと、巧妙なディテールへ惹き込まれる。

ポルシェ911 ターボSは、アメリカ・カリフォルニア州の景色が似合う。目的地までの移動を、悪魔的に高速でこなせる。今回の3台では最も実用性に長け、維持費も少ない。インフォテインメント・システムも段違いに有能だ。

操縦性も出色。アストン マーティンびいきの英国人を虜にすることはなくても、格上の相手を冷酷に打ち負かしてきた過去を持つ。

歴代最強となるAMG由来の665ps V8エンジン

グラマラスなフェンダーを眺めつつ、斜め上へスイングするヴァンテージのドアを開く。2017年に登場した4代目は、大幅に刷新された。ボディシェルは変わらないから、前方視界に目立った違いはないけれど。

やや煩雑なセンターコンソールはそのまま。メルセデス・ベンツ由来の電子技術も継投されているが、優雅な空間に満たされる。5000ポンド(約96万円)のヘリテージデザイン・パッケージで千鳥格子柄を911へ与えても、同じ水準には届かない。

アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)

ヴァンテージのインテリアは、今日のローマも霞ませる。フィット感に甘い部分はあっても、グランドツアラーとして乗り手を覚醒させる。1日中運転していたいと思わせる。

豪奢な素材が心を満たす。レザーは、これ以上がないほど柔らかい。精緻な細工が施された、コントローラーへ触れるのも喜びだ。

ブレーキペダルを踏み、スタートボタンを押す。ロータリーダイヤルが自動的に回り、デフォルトのドライブモードが選ばれる。

その後、しばしの待ち時間。アストン マーティン特有といえるが、即座にシステムは実行されない。改めてスタートボタンを押そうとしたら、スターターが唸り、クロスプレーン・クランクの3.9L V型8気筒ツインターボが爆音で目覚めた。

新しいヴァンテージには、ロードカーとして同社の歴代最強となるV8エンジンが載っている。アイドリング時の低音の響きに、メルセデスAMGのDNAが見え隠れする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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