乗り手を覚醒させる傑作揃い! アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 3台比較(1)

公開 : 2024.11.02 09:45

磨き込まれた走行マナーへ惹き込まれる

かくして2024年のヴァンテージは、以前よりワイドになり、ハードになり、パワフルになった。見た目もシリアス。サウンドも、ドイツ的だがリアルだ。

もう1つ注目すべきポイントは、リアタイヤ。ビルシュタイン社製の最新ダンパーもさることながら、ミシュラン・パイロットスポーツの幅は325もある。

アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)

これは、ヴァンテージの路面との関係性が、流暢から束縛へ転じたことを意味するように思う。911 ターボSは315だが、ローマは285で細身に見えてしまう。

ローマのV8エンジンは、3.9Lのフラットプレーン・クランク。最高出力は620psで、ヴァンテージと大差ない。車重は100kgも軽く、発進時は一層活発だ。

ヴァンテージを数km走らせると、磨き込まれたマナーへ惹き込まれる。鍛造の21インチ・ホイールを履き、低速域での乗り心地が硬いことも否めないが、走りに対する意思表明といえる。不快なほどではない。

サスペンションは、速度抑制用のスピードバンプをなだめる。舗装の剥がれた穴で、強い衝撃が届くこともない。ひと回り小径なホイールを履くローマが、滑らかなことは明らかだが、ヴァンテージも快適と表現できる。

速度が上昇するほど、しなやかさが増す。高い負荷をダンパーが受け止める。運転姿勢は、911 ターボSの次に快適。つま先の奥には、81.4kg-mものトルクが控えている。

ペダルとステアリングの感触が超絶に融合

ローマはフットレストが小さく、足もとの空間に余裕がない。背が高めのドライバーの場合、クルージング時は左足の置き場に少し困る。そのかわり、スリムなシートは身体を包んでくれる。

911 ターボSは、3.7L水平対向6気筒エンジンが生む650psを受け止めるべく、リアサスペンションが硬い。高速道路では、エグゾーストノートをピレリ・タイヤのノイズが打ち消す。長距離移動との親和性へ、影響を及ぼしている。

アブダビ・ブルーのフェラーリ・ローマと、グレーのポルシェ911ターボS、シルバーのアストン マーティン・ヴァンテージ
アブダビ・ブルーのフェラーリ・ローマと、グレーのポルシェ911ターボS、シルバーのアストン マーティン・ヴァンテージ

とはいえ、運転体験は相変わらず素晴らしい。口直しといえるような、まとまりにある。グレートブリテン島の国道を走らせれば、世界最高のパフォーマンスカーを提供するメーカーとして、一目置かれる理由を実感する。大黒柱がSUVだとしても。

ターボで過給されることを、鋭いレスポンスが忘れさせる。アクセルとブレーキ、ステアリングの感触はソリッドで、反応は線形的で正確。それらが超絶に融合している。

911 ターボSは四輪駆動で、フロントにドライブシャフトが備わる。後輪操舵システムも。こんな複雑な技術を実装していても、言葉を失うほどスムーズ。冷や汗をかくような、危うさも皆無といえる。

発進させれば、自ずと運転に夢中になる。ドライブモードをスポーツ・プラスへ切り替える。ただし、ダッシュボード上のスイッチで、サスペンションはソフトに戻したい。英国の道では少し硬すぎるから。

この続きは、アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 3台比較(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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