【ミドシップ&電動化に異議あり?】 E-Rayは8代目コルベットの大本命となり得るか

公開 : 2024.10.21 11:45

2020年にミドシップ・レイアウトを採用しデビューした8代目シボレー・コルベットに、E-Rayと呼ばれる電動化モデルが追加されました。ミドシップな上にハイブリッドのコルベットは、果たしてどんな乗り味なのでしょうか? 吉田拓生が試乗します。

電動化と同時にAWD化も果たした急先鋒

誕生以来一貫してロングノーズの下にエンジンを収めてきたアメリカン・スポーツカーの代表、シボレーコルベット。2020年にデビューした8代目となる現行モデルはついにこれまでの慣習にメスを入れ、ミドシップ・レイアウトを採用している。今回は新たにラインナップに加わった電動化モデルに試乗する機会を得た。『E-Rayクーペ3LZ』である。

E-Rayという車名がエレクトリックのEと伝統的なスティングレイの呼称にかけた造語であることは容易に想像がつくはずだ。この派生モデルの最大の特徴は電動化とともに、コルベット史上初のAWDモデルとなっている点だろう。345幅の超極太リアタイヤを最高出力502psのスモールブロックV8(LT2)エンジンで駆動し、対するフロントは162psを発揮する1基のモーターが駆動している。

8代目シボレー・コルベットは、初のリアミドシップを採用。その電動化モデルは『E-Ray』と呼ばれる。
8代目シボレー・コルベットは、初のリアミドシップを採用。その電動化モデルは『E-Ray』と呼ばれる。    神村聖

似たような機構をもった前例を我々はいくつか知っている。2代目ホンダNSXがそうだったし、フェラーリSF90や、つい先ごろ日本上陸を果たしたランボルギーニレヴエルトもそう。だがコルベットのそれが特徴的なのは、フロントにシングルモーターを置くだけという、シンプルな構成である点だろう。

ライバルたちはフロント2モーターでコーナリングを補助するベクタリングを行いつつ、リアにも1基のモーターを置いている。だから少し意地悪な見方をすれば、コルベットは後ろ半分を既存モデルのまま、前半分だけお手軽に電動化した? 実際に試乗してみるまではそんな印象を抱いていた。

明らかに動的質感が高められた

以前、8代目コルベットに初めて触れたとき気になったのは、エンジンがドライバーの背後に引っ越ししてしまったあとの、フロントからのフィードバックが薄くなっていたこと。スポーツモードでダンパーを引き締めても、減衰が足りない、ふわふわした感じがあったのだ。だが今回、E-Rayと同じタイミングで試乗できたコンバーチブルでは年次改良の成果もあってか、フワフワ感はほとんど感じられなかった。AWDとなったE-Rayではどうか?

標準モデルより明らかに拡幅されたボディを纏ったE-Ray。箱根のワインディングで試したそのドライバビリティに”前電動、後ろエンジン駆動”という、機械的な連携がないことによるちぐはぐな感じは一切なかった。

電動化モデル『E-Ray』は、標準モデルより明らかに拡幅されたボディを纏っている。
電動化モデル『E-Ray』は、標準モデルより明らかに拡幅されたボディを纏っている。    神村聖

体感的なパワーはリアタイヤ、つまりV8エンジンが圧倒的なのだが、感心させられるのは上手に気配を消しているフロントの方。モニターの電力消費を見ていると、僅かとはいえ前輪に安定した駆動力が入っていることが分かる。そのおかげでステアリングの初期応答がリニアになっているし、90kgほどの電動化システムの重みがフロントアクスルに掛かることで、結果的にステアリングフィールに重厚感がプラスされているのである。

ゆっくり走っていても飛ばしていても、E-Rayはノンハイブリッドの標準モデルより明らかに動的質感が高められた1台といえる。これまでZ06のようなパフォーマンスを追求したモデルはあっても、走りの質感をここまで高めたコルベットは初ではないだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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