プジョー「レトロなデザイン採用しない」 歴史的名車は復活せず

公開 : 2024.10.22 06:25

ライバルブランドがレトロ志向になり、歴史的なモデルを復活させている中で、プジョーは未来的なデザインにこだわる方針だ。ノスタルジーに浸ることなく、革新を続けていくとデザイン責任者は語る。

ノスタルジーには浸らない

プジョーはライバルに追随して歴史的モデルを復活させることはなく、未来的なデザインを採用していく方針だ。

同社のデザイン責任者であるマティアス・ホッサン氏はAUTOCARに対し、プジョーがノスタルジーに浸るようなデザインアプローチを採用する予定はないと語った。

2018年のプジョー「Eレジェンド」コンセプト
2018年のプジョー「Eレジェンド」コンセプト

10月14日にフランスで開幕した『パリ・モーターショー2024』では、ルノーがレトロなスタイルの新型4 Eテックや5 Eテック、トゥインゴ・コンセプトを披露していた。

ホッサン氏のコメントは、2018年公開の「Eレジェンド(E-Legend)」コンセプトがどのような形であれ量産に至る可能性はなく、将来のモデルへの影響も最小限にとどまることを裏付けるものだろう。

プジョーブランドを象徴する504セダンの発売50周年を記念してデザインされたEレジェンド・コンセプトは、明らかにレトロな要素を採り入れたモデルだったが、その後市販化されることはなかった。

プジョーの現行車は、軽快なシグネチャーと筋肉質なプロポーションにはEレジェンドの影響が見られるが、レトロというよりむしろ未来的なデザインである。しかし、ホッサン氏によれば、ブランドの歴史や伝統がまったくの無用になったわけではないという。

同氏はEレジェンドを「今でも誇りに思っている」と述べ、「純粋なレトロデザインに走ることなく、過去を再発明するという完璧なバランスだった」と評価した。

「ブランドを再出発させるときに、レトロなデザインをするのはいいことだと思います。いつかブランドにとってのハイライトとなるからです。今のところ、プジョーはそうではないと思います」

つまり、ルノー、フィアット、ミニといったライバルブランドが、知名度の高い過去のモデルから影響を受けて新時代のEVを開発する一方で、プジョーの歴史的モデルが大々的に復活することはないのだ。

未来志向で前向き

ただし、508の後継車に強い影響を与えると予想される「インセプション(Inception)」コンセプトが示すように、将来のモデルは同社の214年の歴史から影響を受けつつも、可能な限りブランドを認識しやすいように設計された、未来的なスタイルの作品になるだろう。

ホッサン氏は次のように語っている。

2023年公開のプジョー「インセプション」コンセプト
2023年公開のプジョー「インセプション」コンセプト

「今日、例えばインセプションでお見せしているのは、プジョーが実は世界で最も古い自動車ブランドの1つであると同時に、未来志向で前向きであるということです」

「チームとしてプジョーをデザインするとき、わたし達は『未来を発明しよう』と言いますが、同時に、わたし達には確固たる基盤があります。素晴らしい歴史があるのです」

「ですから、歴史を決して振り返らないと言っているわけではありません。Eレジェンドはその完璧な例です。しかし同時に、最終的に本当に未来的なものにするにはどうすればいいのか。これが主な課題だと思います」

ホッサン氏は、ノスタルジックなデザインのみを使うのは 「ブランドにとって危険」であり、プジョーが「常に自らを再発明できる」ことを示すことが重要だと語った。

「未来の挑戦者は、もしかしたら今は存在しないブランドかもしれません。歴史という強力な基盤を維持しながら、日常的に、本当にブランドを改革することができるのでしょうか?」

「歴史に学びながら、常に未来を見据えるというのは、とてもバランスがいいのです」

これらの原則に従ってクルマをデザインすることは、プジョーのアイデンティティを強固なものとし、それを促進する上で極めて重要である。今後、プジョーは同じような伝統や知名度を持たない新参ブランドの波に立ち向かわなければならない。

「わたし達は何年も前から、200m先からでもプジョーとわかるようにしようと努力してきました」とホッサン氏は語り、プジョーの現在のデザイン言語が持つ「ネコ科動物のような姿勢」をライバルとの差別化のポイントだと指摘する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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