ジャガーとブガッティを愛した男の夢 パンサー:J72からカリスタまで 旧式な姿+現代の走り!

公開 : 2024.11.10 17:45

刺激的な前方視界 サウンドもSS100へ近い

今回ご登場願ったダークグリーンのJ72には、4.2Lエンジンが載っている。ヴァル・ブリッジ氏がオーナーで、北米からグレートブリテン島へ戻ってきた1台だという。

どの角度から眺めても、SS100のイメージと重なる。フェンダーやヘッドライトなどのディティールに、独自性も見られるが。

パンサーJ72(3.8/1972〜1984年/北米仕様)
パンサーJ72(3.8/1972〜1984年/北米仕様)

小ぶりなドアを開き、大きめのレザーシートへ腰を下ろす。座り心地は良く、作りは丁寧だ。メーターにはジャガーのロゴが入る。ボンネットが長く伸び、刺激的な視界が前方へ広がる。

ブリッジのクルマは3速ATだが、加速は活発。左側から、サイド排気のサウンドが直接響く。その音色もSS100に似ている。緩やかなカーブが連続する郊外の道を走らせれば、想像以上に楽しい。

ステアリングにはパワーアシストが備わり、反応はダイレクトで正確。乗り心地は基本的にしなやかだが、荒れた路面では落ち着きが失われ、操舵にも影響が出てくる。風の巻き込みが大きく、80km/h以上の速度では相当の忍耐力も必要だ。

ロバートは、スタイリッシュなクルーザーとして生み出した。気張らず田舎道を流せば、通行人が笑顔で見つめてくれる。

ロールス・ロイスより高価だったデヴィル

それ以上に多くの注目を集めたのが、余り売れなかったデヴィル。1974年のロンドン・モーターショーで発表され、当時の英国価格は1万7650ポンドから。これは、ロールス・ロイス・ファントムVIやランボルギーニカウンタックより高かった。

ロバートは、ブガッティを創業したエットーレ・ブガッティ氏を深く尊敬していた。不自然なほど長いボンネットと、卵型のラジエターグリルなどは、ブガッティ・タイプ41 ロワイヤルへのオマージュといえた。

パンサー・デヴィル・サルーン(1974〜1982年/英国仕様)
パンサー・デヴィル・サルーン(1974〜1982年/英国仕様)

車重は約2tあり、アメリカの安全規制へ対応するバンパーも含めた全長は5190mm。フロントには、ジャガーの5.3L V12エンジンが鎮座する。

シャシーは独自設計のラダーフレーム。サスペンションは前後とも独立懸架式になり、ジャガーXJの構成へ近づいている。ボディはハンドビルドのアルミ製で、サルーンではオースチン1800用の、コンバーチブルではXJ-C用のドアが流用された。

インテリアはフルレザー。カーペットは毛足の長いウールで、ウォールナット・パネルが各部を彩った。エアコンは標準装備。オプションで自動車電話、カクテルキャビネット、テレビとビデオデッキも選択できた。1台の完成に9か月を要したという。

ピーター・ワード氏は、48台が製造された内の1台、1981年式デヴィル・サルーンを所有している。ボディサイドのランニングボードとホワイトウォール・タイヤ、丸く膨らんだフェンダーラインがエレガントだ。

この続きは、パンサー:J72からカリスタまで(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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