【もうあの頃とは違う】ジャパンモビリティショーが担う役割とは

公開 : 2024.10.24 06:05

これまでの『東京モーターショー』から『ジャパンモビリティショー』の名前を変えて、今回2回目の開催。モビリティ関連企業と次世代を担うスタートアップ企業の共創を生み出すための場へと変貌を遂げた様子を、他のビジネスイベントと比較しながら、森口将之が解説します。

共催のCEATEC 2024は7ホール分使用、その一方……

東京モーターショーから名前が変わったことに合わせて、毎年開催になることがアナウンスされていたジャパンモビリティーショー(JMS)。注目の第2回は10月15日(火)から18日(金)、までの4日間、千葉市の幕張メッセで開催された。

主催した日本自動車工業会(自工会)がビジネスイベントと称していたように、『未来を創る、仲間づくりの場』として、モビリティ関連企業と次世代を担うスタートアップ企業の共創を生み出すための場として用意された。

JMSは1ホールのみ。メディア受付からも遠かった。
JMSは1ホールのみ。メディア受付からも遠かった。    平井大介

それだけに会場を訪れると、昨年のJMSや、その前の東京モーターショーとは異なる点がいくつもあった。東京モーターショーの延長線上という気持ちで足を運んだ人は、戸惑ったかもしれない。

まず驚いたのは、単独開催ではなく、今年で25周年を迎えるデジタルイノベーションの総合展示会、CEATEC(シーテック)2024との共催だったことだ。しかも会場となった幕張メッセ1〜8ホールのうち、JMSはホール1だけで、残りはCEATECで占められていた。

東京モーターショーは幕張メッセで行われていたこともあるが、そのときはすべてのホールを使用していたと記憶している。幕張メッセには道路を挟んだ反対側にホール9〜11があり、自動車関連では東京オートサロンやオートモビルカウンシルなどが3ホールをフルに使って開催している。

日本を代表するインドアイベントであるJMSが、CEATECの片隅で開催されているという現実は、ちょっとショックだった。

CESやSXSWとの違い

会場の中に入ると、事業会社のブースと、カーボンニュートラル、スタートアップのブースが、通路で隔てられていたことに気づいた。

ちなみに米国のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)やSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)など、スタートアップの出展が多いイベントは、会社の規模や経験に関係なくブースを配置していたと記憶している。

純粋な来場者と共に、出展者がお互いのブースを見て回る様子がよく見られた。
純粋な来場者と共に、出展者がお互いのブースを見て回る様子がよく見られた。    平井大介

モーターショーは欧米を含めて、老舗メーカーとスタートアップをきっちり分ける傾向にあるので、これが業界の慣例なのかもしれないが、CESやSXSWのほうがワクワク感はあるのも事実だ。

ブースが狭いことも気になった。自動車メーカーのブースも決して広くはなかったが、ステージの左右に実車を置くスペースがあった。これに対して、スタートアップのブースは狭く、展示できるのは自転車ぐらいまで。そのため車両を持っていながら展示ができない会社もあった。

自工会のニュースリリースによれば、参加企業・団体数は203。そのうちスタートアップが145 社を占めた。昨年はスタートアップを含めて475企業・団体だったので、3分の1弱ということになる。

モビリティの展示は、それだけで場所を取るものだし、パーソナルモビリティは試乗できる場所も欲しい。それを考えれば、やはりもっと広いスペースが欲しかった。

自動車メーカーのビジネスシーンへの考え方はさまざまだ。トヨタ水素社会の展開にスポットを当てており、日産は車両やバッテリーのマネジメントサービス、ホンダはパーソナルモビリティのサービスを紹介していた。

地方のモビリティサービスを見てきた者としては、日野の自家用有償旅客運送向け遠隔運行管理受託サービスや、ヤマハ発動機のグリーンスローモビリティなどがないことが不思議に感じた。

この2社は車両展示はあったものの、ブースがなかった。個人的には、地域移動という特設ブースを設けて展開しても良いほど重要なテーマだと認識しているので、ブース展示もしてほしかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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