【乗り味の良さはバッテリーのおかげ?】ホンダのBEVモデル、N-VAN e:試乗記

公開 : 2024.10.24 17:05

ホンダが新たに世に送り出したBEV戦略モデル『N-VAN e:』に、篠原政明が試乗。商用としても、趣味グルマとしても感じたポテンシャルの高さをレポートします。

BEVスペシャルモデルではなく、N-VANをBEVに

2020年、ホンダは初のフル量産BEV(バッテリー電気自動車)『ホンダe』を発売した。だが、セカンドカー的なクルマを目指すというコンセプトとデザインが先行したものの販売には結びつかず、残念ながら2024年1月で生産を終了した。

そこでホンダが新たなBEV戦略モデルとして発表したのが、今回の『N-VAN e:(エヌバンイー)』だ。その名のとおり、ベース車はホンダの軽商用スーパーハイトワゴンのN-VAN。2018年に登場以来、運転席以外のシートをたたんでフラットで広いカーゴスペースを生み出す使い勝手の高さなどで、ビジネスユースはもちろん個人ユースでも人気を集めている。

乗り味しっかりで、パワー不足もなし。タイヤ次第で走りも楽しめそうだ。
乗り味しっかりで、パワー不足もなし。タイヤ次第で走りも楽しめそうだ。    田中秀宣

ホンダ独自のセンタータンクプラットフォームを活かし、ガソリンタンクの位置にバッテリーを、フロントのエンジン部にモーター類を搭載。これによりN-VAN e:は、エンジン車のN-VANと変わらないラゲッジスペースと使い勝手を実現した。これは見事というしかない。

エクステリアも遠目に見るとエンジン車と変わらない。近くによるとリサイクル樹脂を使ったフロントグリルに充電ポートが備わっているので、差別化できる。

インテリアも基本的なデザインは変わらないが、スイッチ式となったATセレクターやその下に備わるパワーウインドウスイッチ、フラット化されてビードの入ったドア内張りなどが特徴的だ。

バリエーションは業務用に特化した1人乗りとタンデム2人乗り(いずれもオンラインストア限定販売)、リアシートも備えた4人乗り、そして個人事業と乗用を兼ねた4人乗りのe:FUNの4グレード。今回は、趣味グルマとしても使えるe:FUNに試乗した。

商用車とは思えない乗り味の良さ。全域でパワフル

今回の試乗は市街地が中心で、首都高速を少しだけ走ってみた。乗員はドライバーとカメラマンの2名、そして撮影機材+αの荷物だから、実際の使用ではもっと積載量が増えることが多いだろう。それゆえ、空荷の商用車にありがちなポンポン跳ねるような乗り心地を想像したのだが、その予想は大きく裏切られた。少なめの積載量でも、乗り心地は悪くない。13インチにアップしたタイヤや適切なサスペンションセッティング、そしてエンジン車より約200kg重い車両重量の恩恵(?)もあるのか、乗り味はけっこうしっかりしている。

BEVというと初期ゲインの強い発進では、と思われるが、商用ユースでは荷物が倒れてしまったりするのを防ぐため、マイルドな設定にされている。したがって、普通にアクセルを踏み込めば比較的ジェントルに発進し、その後スーッと加速する。それでも余力は十分で、少しハンドルを切った状態でアクセルをベタ踏みして発進するとホイールスピンを起こすほど。

エンジン車と変わらないラゲッジスペースと使い勝手には、お見事の一言。
エンジン車と変わらないラゲッジスペースと使い勝手には、お見事の一言。    田中秀宣

低速域のトルク感はBEVならでは。そして高速域は軽ターボ並みに車速が伸びる。しかもエンジン車ではフル加速時にエンジンが高回転まで回ることで音が騒がしいが、N-VAN e:は全域で静か。気になるのはタイヤノイズくらいだ。

エンジン車より約200kg重いにもかかわらず、パワー不足を感じることはない。しかも、重いバッテリーを床下に搭載して低重心となっているから、見た目から想像されるよりコーナリングスピードは速い。もう少し良いタイヤを履けば走りも楽しめそう……、なんて考える乗用ユーザーも増えるに違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    篠原政明

    Masaaki Shinohara

    1958年生まれ。某自動車雑誌出版社をめでたく? 卒業し、フリーランスのライター&エディターに。この業界に永くいるおかげで、現在は消滅したものを含めて、日本に導入されている全ブランドのクルマに乗ってきた……はず。クルマ以外の乗りものもけっこう好きで、飛行機や鉄道、さらには軍事モノにも興味があるらしい。RJC会員。
  • 撮影

    田中秀宣

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。

関連テーマ

おすすめ記事