「1クラス上」の上質さ! フォルクスワーゲン・ポロへ試乗 強み沢山のハッチバック

公開 : 2024.11.06 19:05

燃費の良い95psのターボ しなやかな乗り心地

それでは公道へ出てみよう。英国仕様のエンジンは、TSIと呼ばれる1.0L 3気筒自然吸気の80psがエントリーユニット。その上にターボ版があり、95psか115psが選べる。

まず試乗したのは、80psの自然吸気。活発に走らせるには5速MTを積極的に操り、3700-3900rpmで発生する9.5kg-mの最大トルクを活用する必要がある。0-100km/h加速は、15.6秒と穏やかだ。

フォルクスワーゲン・ポロ(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ポロ(英国仕様)

英国での主力は、95psを発揮する同じエンジンのターボ版。1600-3500rpmで17.8kg-mを発揮し、明確にたくましい。低回転域ではややノイジーだが、回転上昇は滑らかだ。

ただし5速MTのギア比が高く、燃費は優れるが、それなりに回さないと鋭い加速は得にくい。0-100km/h加速は10.8秒だ。DSGと呼ばれる、7速デュアルクラッチATも選べる。スムーズにギアは切り替わるが、キックダウンの反応はやや鈍い。

この上にあるのが、115psの1.0Lターボ。最大トルクは20.4kg-mへ上昇し、0-100km/h加速は9.8秒へ短縮される。

乗り心地は全般的にしなやか。最小クラスとは思えないほど上質だ。高速域での安定感は高く、路面のうねりも巧みに均してくれる。市街地の速度域での、凹凸の処理も見事。隆起部分では揺れが残るものの、堪えるような衝撃までは伝わらない。

ステアリングホイールは、適度にクイックで適度に重い。市街地では機敏に扱え、高速道路ではひと回り大きいモデルのように安心感を与える。グリップ力が高く、カーブが連続する区間では小さなボディを軽快に操れる。

安定した走り 外界との優れた隔離性

挙動を予想しやすい操縦性で、運転も楽しい。優れたグリップバランスで、アンダーステアも抑えられている。気張るほど徐々に外へ膨らむが、不安を招くほどではない。

ボディロールが大きくなると、タイヤの負荷が高まり、ステアリングホイールの重さも増す。グリップ力の限界を探れる、接地感までは伝わらないが。

フォルクスワーゲン・ポロ(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ポロ(英国仕様)

シャシーは安定志向で、旋回中にアクセルペダルを一気に緩めても、リアタイヤを振り回せるわけではない。とはいえ、安定した走りや外界との優れた隔離性は、歴代のポロで受け継がれてきた強みだ。

英国価格は、80psのエントリーグレードでも約2万1000ポンド(約407万円)からとお高め。115psのブラックエディションを指定すると、約2万7500ポンド(約534万円)へ上昇する。

燃費は、80ps版で18.7km/L。エンジンの負荷が小さくなる95ps版では、19.3km/Lへ伸びる。115psでは、7速DSGのRライン・グレードで18.6km/Lがうたわれる。

7年目を迎えた6代目ポロ。走りの興奮を得るならGTIを指定することになるが、優れた完成度や実用性、製造品質など、今でも魅力は多い。大人っぽい雰囲気も好ましい。

個性は薄めといえ、現在は208やクリオ(ルーテシア)といった訴求力の高いモデルも存在する。だが、このクラスでは得難い懐の深い能力も有する。安心感の高い操縦性と良好な燃費、乗り心地や洗練性など、完璧なバランスにあるといっていい。

◯:広々とした車内空間 高い製造品質と1ランク上の装備 快適性と操縦性の優れたバランス
△:動的な刺激は薄め もう少し個性が欲しいデザイン ライバルに及ばないコスパ

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    キースWRジョーンズ

    Keith WR Jones

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事