【詳細データテスト】マセラティMC20 しなやかでソフトなシャシー 十分速い 独特なスーパーカー
公開 : 2024.11.02 20:25
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
いまどきのスーパーカーは、衝撃的だが愛らしくはないのがほとんどだ。クラウス・ブッセ率いる社内ティームがデザインしたMC20は、どちらの要素も兼ね備えている。
切り立ったテールには、飾り気のないテールパイプと控えめなリップを備え、先のすぼまったノーズは250Fにインスパイアされたもの。虫っぽいフェラーリやマクラーレン、ランボルギーニに比べるとエレガントだ。マセラティ曰く、空力で得られるスタビリティのキモはアンダーボディで、ボディの造形がごちゃついていない。その仕事ぶりはみごとだ。
メカニズムもルックスと同様に、PHEV化が進む主なライバルたちほど複雑ではない。パワートレインは3000ccのV6ツインターボで、トランスミッションはトレメック製の8速DCT。LSDは備えるが、電子制御タイプはオプションだ。ハイブリッドはもちろん、四輪駆動も四輪操舵も用意していない。
押し出しアルミ材のサブフレームは、ダラーラが開発したおよそ100kgのカーボンモノコックに接続され、そこから630psのドライブラインがぶら下がっている。駆動輪はリアのみで、足回りにはアダプティブダンパーを採用。ブレーキは鋳鉄ディスクが標準装備で、カーボンセラミックはオプション。潔いほどシンプルだ。
しかし、セミヴァーチャルステアリングを備えるウィッシュボーンサスペンションは、まったく一般的ではない。前後とも、ロワーリンクは2本あるが、アッパーリンクは1本で、接地性の維持に有利だというのがマセラティの主張だ。一般的な2リンクを用いるライバルは、賛同しかねるだろうが。
90度バンクでドライサンプのネットゥーノV6も、全面新設計だという。F1由来のプレチャンバー点火を用いるこのモデナ製エンジンは、いまやグレカーレやグラントゥーリズモにも積まれているが、最初に搭載したのはMC20だった。混合気は、ピストンが圧縮工程にある間に、プレチャンバーへ噴射される。それから点火され、それがスペシャルホールから燃焼室へと伝わる。
これにより効率を改善するが、比出力は210ps/Lと、フェラーリ296GTBの120度V6が発揮する221ps/Lに後れをとる。なお、マクラーレン・アルトゥーラが積むリカルド製V6は、196ps/Lだ。
マセラティによれば、開発の97%はヴァーチャルで行われたという。ドライビングシミュレーターを導入するメーカーは増えるばかりで、おそらくその数字も驚くには値しないだろう。
開閉式ハードトップの採用で65kg増加したシエロの公称重量は1540kgだが、実測重量は1783kg。これは競合するPHEVより重いという、なんとも不可解な数字だ。