【詳細データテスト】マセラティMC20 しなやかでソフトなシャシー 十分速い 独特なスーパーカー

公開 : 2024.11.02 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

まずまずの道で、MC20の独自性を知るには、コーナーひとつもいらない。マセラティは詳細をあまり明かさないが、もしこのクルマがクラスでもっともスローなステアリングレシオと、もっともソフトなスプリングを備えているのでなければ、われわれは驚かされるところだ。

しかしながら、顕著なボディ挙動と一定したステアリングにドライバーが合わせることができれば、マセラティがみごとなロードカーを生み出したことがわかる。すばらしくバランスに優れ、コントロール系は出来がいい。びっくりするほど路面を吸収してくれるが、舗装の谷やコーナー途中の隆起に乱されることは滅多にない。

ソフトな足回りとクイックすぎないステアリングにより、普段使いは楽チン。最初はぼんやりして頼りなく感じるかもしれないが、その特性に慣れてしまえば直観的に操れる。
ソフトな足回りとクイックすぎないステアリングにより、普段使いは楽チン。最初はぼんやりして頼りなく感じるかもしれないが、その特性に慣れてしまえば直観的に操れる。

われわれが好むセットアップは、スポーツモードを基本に、減衰力をミッドからソフトへ落とし、ギアボックスをマニュアルモードにした状態。そうすると、ふたとおりの楽しみ方ができる。まずは高いギアを選び、トルク頼みで走れば、しなやかなシャシーが直観的で扱いやすい遷移を見せる。いっぽうで回転を上げて走れば、状況が許せばテールを流すこともできるが、すべてが直観的だ。

思いっきり飛ばすなら、ベストな選択はコルサモードだ。ESPやトラクションコントロールの制御は緩くなり、エンジンはブースト圧が最大となる。ほかのモードなら3500rpm以上で開くエキゾーストのバルブは、常に開きっぱなしだ。それでも、公道走行に適した順応性は失われない。

とはいえ、クルマの様子を見ることは必要だ。ステアリングは、ほとんどキャラクターというものが明確にはなく、アルトゥーラのように容易に自信を与えてくれることも、296GTBのような精密さを感じさせることもない。なめらかで自由度の高いボディ挙動は、このクルマのグリップとバランスに全幅の信頼を置けないのであれば、落ち着かない気分にさせられるかもしれない。

さらに、スロットルレスポンスが、最新のPHEVスーパーカーに比べると劣ってしまう。そのため、乗りはじめはやや曖昧なクルマに感じられてしまう。

もっと単調に走るなら、ドライバビリティはわかりやすく、必要とあれば市街地を淡々と移動することも簡単。また、じつに従順で、ソフトなシートも備えているので、クルーザーとしての出来もいい。

問題は、カーボンタブによる静粛性の低さだ。113km/hで76dBAという室内騒音は、このクラスでも最大級のうるささだ。

記事に関わった人々

  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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