どんなイベントでも大注目? パンサー・ソロ 2(2) チャンスを逃した驚くほどの動的能力

公開 : 2024.11.16 17:46

疑わしい製造品質 驚くほど優れる動的能力

先細りのフロントノーズは低い。両端に、縦軸に回転するリトラクタブル・ヘッドライトが備わる。スペアタイヤが積まれ、ボンネットの中央が膨らんでいる。タイヤは小ぶりな15インチで、1980年代感を醸し出している。幅は前が195、後ろが205だ。

ドアの開口部は小さく、乗り降りは少し難しい。正面のパネルには、6枚のメーターが並ぶ。センターコンソールはドライバー側に傾き、その下部には幅の広いトランスミッション・トンネル。内装は、レザーとアルカンターラで仕立てられている。

パンサー・ソロ 2(1990〜1991年/英国仕様)
パンサー・ソロ 2(1990〜1991年/英国仕様)

価格を踏まえると、製造品質は疑わしい。ボディパネルの隙間にも、むらがある。ペダルが僅かに左側へオフセットしているが、運転姿勢自体は悪くない。

4気筒エンジンは、静かに始動。5速MTのシフトレバーは、ノッチ感があるものの、ゲートへ正確に導ける。クラッチペダルは重め。路面の凹凸を超える度に、内装のトリム類がカタカタと鳴る。

しかし、細かな不満はペースを速めればすぐに忘れる。ステアリングホイールは速度上昇とともに軽くなり、比較的ハイレシオで連続するカーブを縫いやすい。姿勢制御は引き締まり、旋回速度を高めていこうという気にさせる。

細身のタイヤでもグリップ力に不足はなく、リアのグッドイヤー・イーグルもヒタヒタと路面を掴み続ける。シャシー全体が高次元に調整されており、高い信頼感を抱ける。ソロ 2の動的な能力は、驚くほど優れている。

大きなチャンスを逃したパンサー

そのおかげで、2.0L 4気筒ターボエンジンが役不足に思えてくる。サウンドは回転数を問わずビジネスライクで、吹け上がりも軽くはない。3000rpmから5000rpmの間では、少し気持ちを高ぶらせてくれるが、1990年代の水準でもパワフルとはいえない。

神秘的なブランドで、特徴的なスタイリングだとしても、エンジンの印象はあくまでもフォード。結果的に、ソロ 2はロータス・エスプリ・ターボのライバルにはなり得なかった。

パンサー・ソロ 2(1990〜1991年/英国仕様)
パンサー・ソロ 2(1990〜1991年/英国仕様)

パンサーは、大きなチャンスを逃したように思う。高性能ユニットをミドシップし、さらに開発が煮詰められていれば、ジャイアントキラーになれた可能性は充分にある。高めの英国価格も、正当化できたように思う。

協力:パンサー・カークラブ

パンサー・ソロ 2(1990〜1991年/英国仕様)のスペック

英国価格:3万9850ポンド(1975年時)/10万ポンド(約1940万円/現在)以下
生産数:11台
全長:4334mm
全幅:1790mm
全高:1180mm
最高速度:231km/h
0-97km/h加速:6.8秒
燃費:6.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1561kg
パワートレイン:直列4気筒1993cc ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:206ps/6000rpm
最大トルク:27.6kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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