【日本仕様で発車オーライ】ヒョンデ・エレクシティ・タウン、仕上がりはいかに?

公開 : 2024.10.30 07:05

ヒョンデの中型路線型BEVバス、『エレクシティ・タウン』。7月には、岩崎産業が屋久島に導入することを発表し、基本合意書締結式が行われました。その後、日本の路線バス仕様に仕上がった実車を、森口将之がレポートします。

エレクシティ・タウン、バステクで展示

10月18日、東京都江東区にある海の森水上競技場で、『第10回バステクin首都圏』が開催された。バス・商用車の専門誌を出している、ぽると出版が主催する体験型イベントで、大阪府で行われるバステクフォーラムともども、毎年開催しているという。

会場には最新の電気バスやディーゼルエンジン観光バス、安全性能や運転環境の向上のための各種機器を搭載した車両など、合わせて16台が展示され、乗客として試乗できる車両もあった。

ブルーのアクセントLINEが印象的。グラフィックは使用するバス会社によって変えられる。
ブルーのアクセントLINEが印象的。グラフィックは使用するバス会社によって変えられる。    森口将之

さらに電気バスの運行を支える充電設備、バスの安全・快適・ 経済性向上に貢献する各種機器・用品・システムなども展示されていた。

その中に、7月に日本導入が発表されたヒョンデの電気バス『エレクシティ・タウン』もあったので取材してきた。

日本導入の発表会では、カタログと同じグリーンに塗られた車両の写真が紹介されたが、展示されていたのは白いボディだった。サイドやリアを含めて見ることができたので、窓まわりを黒で塗り分け、ブルーのアクセントラインを周囲に配したグラフィックがわかりやすかった。

とりわけ目に留まったのはサイドの窓の下のラインで、特徴的なフロントマスクとのつながりを出すとともに、動きを与えるためかウェーブを描いており、ルーフに合わせた上端のラインともども、デザインへのこだわりを感じた。

また窓の上には白抜きでELEC CITY TOWN、アクセントラインと同じブルーでZERO EMISSION BUSと記してあった。このあたりのグラフィックは、導入されるバス事業者によって変わってくるだろうが、展示会ではヒョンデの電気バスであることがわかりやすかった。

信頼性を重視し、センターモーターを採用

後ろ姿も印象的で、日本製の路線バスと比べると丸みを帯びており、縦に4つ並んだランプ、クロームメッキのロゴなど、華やかな感じを受けた。リアウインドウの内側には行先表示板があるので、後方確認はカメラで行うようだ。乗降中であることを示す縦長の電光表示など、日本向けの仕様になっていることにも気づいた。

車内も右ハンドルの運転席、その横の運賃箱、中扉の脇の整理券発行機など、日本仕様の仕立てだった。乗用車にも装備が進んでいるドライバー異常時対応システムも追加してあり、運転席や車内に赤いボタンが備わっていた。

リアの行き先表示板や、『乗降中』の縦型電光表示など、日本のバスに備わる仕様は揃っている。
リアの行き先表示板や、『乗降中』の縦型電光表示など、日本のバスに備わる仕様は揃っている。    森口将之

フロアはフル低床ではなく、リアドアから後ろは少しずつ高くなっていて、日本製のディーゼルエンジンバスと同じ。電気バスの中には、左右後輪を別々のモーターにすることでフル低床とした車種もあるが、エレクシティ・タウンは信頼性を重視してセンターモーターにしたと、カタログには記されていた。

降車ボタンは、ポールにあるのは丸い韓国用、壁にあるのは四角い日本用で、最終的には後者に統一されるはずだが、隣の国なのに形が違うことが興味深かった。

中扉には反転式スロープを内蔵し、奥の座席は折り畳み式で、床には固定用フックが備わるなど、車いす対応ももちろん備わっている。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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