FFスポーツ実験は大成功! ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(1) タイプR誕生前夜

公開 : 2024.11.17 17:45

タイプRが登場する以前、高性能なホンダに命名された「Si」 多くのドライバーを魅了したFFスポーツ 以心伝心のような操縦性 想像以上に熱くなれる92ps 英編集部が2台を振り返る

ドライバーを魅了したホンダのFFスポーツ

記念すべき初代ホンダCRX(CR-X) Siの発表は、1984年。クルマ好きの話題をさらった、小さなクーペだ。

同クラスのライバルより軽いボディに、1.5L 3気筒の燃料インジェクション・エンジンを搭載。文句なしのFFスポーツと呼べる性能を備えつつ、今の金額で2万1000ポンド(約407万円)相当という手軽さで、多くのドライバーを魅了した。燃費も良かった。

ホンダCR-X Si(1984〜1987年/北米仕様)
ホンダCR-X Si(1984〜1987年/北米仕様)

完成度の高さに調子づき、翌年には同じ1.5Lユニットをハッチバックのシビックにも搭載。これもSiと名付けられ、ホンダ製ホットハッチの原型が誕生している。

今回ご登場願ったのは、まさにその2台。アメリカ・カリフォルニア州にあるアメリカン・ホンダ・モーター社のコレクションホールへ、普段は展示されている北米仕様だ。

この「Si」グレードはプレリュードにも登用され、北米市場で長く愛用されている。現行のシビックにも、Siは用意されているほど。ATがメジャー化する中でMTを指定できる、数少ない量産車の1台になっている。

今でも、身近な価格帯にあるスポーティなホンダ車が好きだ、というアメリカ人は少なくない。ピックアップトラックやフルサイズSUVの国ではあるけれど。

ルネッサンス・エクスペリメンタル

1980年代に、大成功と呼べる支持を構築したシビック。アメリカン・ビッグ3、GMやフォードクライスラーの例に習って、ホンダは1983年の3代目から、4年毎にモデルチェンジするというライフサイクルを導入した。

ボディ・バリエーションも拡大された。3ドアハッチバックや4ドアサルーンに加えて、5ドアのMPV、シャトルを導入。2ドアクーペのCR-Xもその1つだ。排気ガス規制の緩かった日本と欧州では、燃料インジェクション・エンジン仕様も発売された。

レッドのホンダ・シビック Siと、ブラックのホンダCR-X Si
レッドのホンダ・シビック Siと、ブラックのホンダCR-X Si

他方、規制の厳しいアメリカでは、当初は1.3Lのキャブレターのみ。そのCR-X HFは60psに留まったが、燃費が強みだった。

ウェッジシェイプの滑らかなボディを持ち、CR-Xは3代目シビック・シリーズの中でも特に空気抵抗が小さい。軽さも手伝い、現地のテスト結果で23.7km/Lという高効率を達成していた。

CR-X Siは、1984年末に北米市場へ上陸。僅かにデチューンされ、1.5L SOHCエンジンは92psを発揮した。

アルファベット3文字のモデル名は、シビック・ルネッサンス・エクスペリメンタルの略だとされている。英語を母国語としない、日本的な表現といえたが、スポーティでカッコいいイメージを醸し出していたことは間違いないだろう。

前輪駆動のスポーツ・クーペとしては、ランチアフルビアと、その後継に当たるベータが存在したが、その程度。FFスポーツを実験(エクスペリメンタル)する意図が、ホンダにはあったのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ホンダCR-X シビック 2台の「Si」の前後関係

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