安価な革新的EV、ルノーが2028年導入へ バッテリーコスト50%削減、充電時間は15分に
公開 : 2024.11.04 06:25
新しいバッテリー技術
ルノーの新世代EVにとって特に重要な技術開発は、エネルギー密度がはるかに高いバッテリーパックの導入である。同社は「ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)のエネルギー密度、リン酸鉄リチウム(LFP)のコストと安全性、15分未満の充電」を組み合わせたものになると説明する。
バッテリーのコストの60~75%が化学組成(ケミストリー)によるものだと、ルノーは言う。これがエンジン車との価格差の主な要因であり、新しいタイプのバッテリーへの投資を促す主な動機となっている。
ルノーは2026年以降、主力のEVバッテリーをNMCからLFPに切り替える予定であり、これにより航続距離に影響を与えることなくコストを20%削減できるとしている。
アンペアはルノーのEVプラットフォーム開発陣と協力し、LFPに内在する効率低下を補う新しいセル・トゥ・パック構造を設計した。これにより、コスト削減がエネルギー出力の低下を招くことはなくなった。
同社は、コバルトフリーの正極材とシリコン負極材を組み合わせた新しい化学組成を導入することで、2028年までにコストを50%(現在比)削減する予定である。LFPの安全性を維持しながら、NMCと同等のエネルギー密度を実現するという。さらに、充電時間を大幅に短縮(15分)できるという利点もある。
そして今後10年以内に、シリコン負極材をリチウムに置き換えることで、NMCバッテリーのエネルギー密度を2倍に高めることを目指す。これは、ルノーが量産車に搭載予定の全固体電池で「基本構成」と呼ばれる組成である。
アライアンスパートナーの日産は2028年から全固体電池搭載EVを販売する計画だが、ルノーも同じスケジュールで対応できるのだろうか? アンペアのバッテリー化学開発責任者であるモハメド・タゴギ氏は問い合わせに対し、日産と「協議中」であるとだけ答えた。
ルノーのエンジニアは、バッテリーコストの25~40%が組み立て(ケーシングとシャシーへの取り付け)に関連し、2028年までに同コストを半減させることもアンペアの計画の鍵であると述べた。
ここでもまた、エネルギー容量を最大化するセル・トゥ・パック構造が重要となる。また、今後発売されるEVにセル・トゥ・シャシー構造を採用し、さらに効率を高める作業が進行中だ。
二酸化炭素排出量の削減
ルノーの電動化戦略の中心にあるのは、自動車とグローバル事業活動の両方における二酸化炭素排出量を大きく削減するという目標だ。
その意欲は、エンブレム・コンセプトに象徴されている。同車は、製品ライフサイクル全体(使用15年または走行20万km)で排出される二酸化炭素量がわずか5トンと予測されている。これに対し、現行世代のガソリンエンジン車「キャプチャー」の排出量は約50トンである。
バッテリー素材の調達や、車両全体で使用される膨大な数の部品の影響を考慮すると、キャプチャーをEVにしても「この問題の半分しか解決できない」と、サステナビリティ担当のクレア・マルティネ氏は主張する。
マルティネ氏は、自動車生産においてネット・ゼロを実現できるかどうかは、低炭素エネルギーの調達、バッテリー工場の効率の最適化、そしてできる限り影響の少ないバッテリー素材の調達にかかっていると述べた。これらはすべて、ルノーが新世代EVの展開に掲げている目標である。
バッテリーのケースにリサイクル・アルミニウムを使用することや、電気炉で鉄鉱石と水素を混ぜて「最も耐久性が高く、要求の厳しい部品の1つ」であるスチール製ボディパネルを生産することも、目標達成に向けた重要なステップとなる。
AUTOCARの取材に応じたマルティネ氏は、広範なサプライチェーンの二酸化炭素排出量の削減にどのように取り組むのかという質問に対し、「それは当社のロジスティクス部門における脱炭素化戦略の一部です。2030年までに20%削減するという目標を掲げています」と答えた。
フランス北部にあるルノーのEV生産拠点エレクトリシティについても言及し、「ここで本当に重要なのは、ティア1サプライヤーの75%が300km圏内に位置していることです」とした。
マルティネ氏は「EVメーカーにとって、欧州にこのように強力な地域拠点があることは有益です」と述べ、EUの炭素国境調整メカニズム(EU域外からの輸入品に課税する制度。略称:CBAM)が本格適用された際には、さらに有益性が増すだろうと付け加えた。