ちゃんと「サソリ」してる! アバルト600eへ試乗 プラットフォームから違う 新モーターで240ps

公開 : 2024.11.03 19:05

線形的なパワーデリバリー 強力なブレーキ

発進前に、ドライブモードを選ぼう。スコーピオン・トラック、スコーピオン・ストリート、ツーリスモという3択になる。最後のモードは最高出力が189psへ、最高速度が149kmへ制限され、ステアリングホイールが軽くなる。

カーブが連続する区間では、スコーピオン・トラック・モードが良い。240psが開放され、鋭くリニアなステアリングと、適度に引き締まったサスペンションを活かせる。アクセルペダルの反応が良く、市街地でも筆者は好ましいと感じた。

アバルト600e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト600e ツーリスモ(英国仕様)

パワーデリバリーは、アバルト500eと異なり線形的。徐々に力強さが増していく。不満ないほどパワフルで、圧倒されるほど激しいわけではない。エンジン・モデルから乗り換えても、すぐに馴染めるだろう。

スコーピオニッシマでは39ps増強され、動力性能は一段上。ただし、35.0kg-mの最大トルクは同値だから、日常的な環境で明確な違いを感じるほどではない。

ブレーキは、直径380mmのディスクと4ポッドキャリパーをフロントに採用。リアのディスクは、276mmある。フェード性も高めた、強力な専用品だ。

ペダルのストロークの半分くらいまでは、重み付けが丁度良く、効きも漸進的。安心感が高い。だが、それ以上踏み込むと感触は曖昧に。力を込めたぶんだけ制動力が増す、というわけではないようだ。

ブレーキペダルを踏まずに止まれる、ワンペダルドライブには非対応。回生ブレーキは、徐々にスピードが落ちる制御で扱いやすい。

ワインディングが得意分野 乗り心地は良好

アバルト600eにはリミテッドスリップ・デフが組まれ、ワインディングが得意分野。旋回中にブレーキを踏むと、内側のフロントタイヤへパワーがしっかり伝わり、ラインを絞っていける。

ただし、少しアンダーステア傾向。テールを振り回せるわけではなく、やや単調に感じるドライバーはいるだろう。一体感が強いともいえない。

アバルト600e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト600e ツーリスモ(英国仕様)

ステアリングは軽めながら、反応はダイレクト。切り始めは過敏に思えるものの、更に角度を増やしていくと漸進的に回頭していく。

優れたグリップ力を活かし、鋭い脱出加速は可能。最大トルクを、シャシーはしっかり受け止める。アバルトらしいパフォーマンスを楽しめる。

乗り心地は硬すぎず、速度域の低い市街地でも良好。速度抑止用のスピードバンプを通過すると、シートベースへ振動が伝わる場面もあり、減衰特性はもう少し煮詰める余地はありそうだが。

走行時のノイズは大きめ。60km/hを過ぎた辺りから、転がり音が目立つようになる。風切り音は、抑え込まれている。

今回の試乗での電費は、平均で5.1km/kWhとなった。1度の充電で、262km走れる計算になる。急速充電能力は最大100kWで、クラス最速というわけではない。

英国価格は3万6975ポンド(約717万円)から。同等内容のジュニアより僅かに高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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