【現役デザイナーの眼:ホンダNボックス・ジョイ】宗一郎イズムとマッチしたデザイン

公開 : 2024.11.08 18:05

ホンダデザインはミニマルデザイン?

皆さんは、現在のホンダのデザインをどう感じているでしょうか?

変わりはじめたな、と感じたのは現行型フィットからだと思います。その後ステップワゴンや、今回取り上げているNボックス、また先日発売されたフリードと続いています。みんな同じようなテイストを感じますよね。

こちらは昨年、私がデザインしたNボックスのアウトドア仕様。ヘッドライトを変更しない場合、他の部分を大きく変えないと差別化が難しい、ということがこのデザインから見て取れる。
こちらは昨年、私がデザインしたNボックスのアウトドア仕様。ヘッドライトを変更しない場合、他の部分を大きく変えないと差別化が難しい、ということがこのデザインから見て取れる。    渕野健太郎

私が感じているのは、無駄なものを省いた『ミニマルデザイン』です。

ホンダとして、このような言い回しはしていないと思うのですが、『無印良品』のようなデザインと言えば皆さん納得する方が多いのではないでしょうか?

ホンダには、本田宗一郎氏が指揮を取っていた頃に誕生した『M・M思想』というものがあります。人が中心で、機械は出来るだけ小さく、という思想です。

この思想はミニマルデザインと、とても相性がいいんです。いわばホンダの中核をなす思想をデザインでも表現した、と言えると思います。

私は、他社と差別化するという意味でも、一個人デザイナーの思想としても、基本的にはとても良い方向だと思っています。

現代のカーデザインは、迫力を追求するものが多く、結果的にみんな同じ方向を向いていると思っています。その中でシンプルなデザインを追求するというのは、ユーザーの選択肢が広がります。また、私の周りのデザイナーたちは、現在のホンダデザインに賛同する方が多いです。

しかし一方で、そのようなデザインは、ユーザーを限定しすぎるかもしれません。

ミニマルデザインで、高級志向の方を満足させるのはすごく難しく、またカジュアル志向の方には物足りないデザインになりがちです。この辺りをうまくバランスを取れたら、もっと飛躍するのではないかと考えます。

記事に関わった人々

  • 執筆 / アートワーク

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、大手自動車メーカーにカーデザイナーとして入社。2023年『体力の限界」ということで惜しまれつつ? 引退。約20年間の現役時代は『自称』エース格としてさまざまな試合に投入され、結果を出してきた(と思う)。引退後はチームを離れフリーランスを選択。これまで育ててくれた自動車業界への恩返しとして、自動車の訴求活動を行っている。

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