【Gクラス史上初のBEV】メルセデス・ベンツの開発担当者がエンジン車との違いを解説!

公開 : 2024.11.04 11:45

メルセデス・ベンツGクラスに追加された、モデル史上初となるBEV、『G580 with EQテクノロジー』。ドイツ本国から来日したプロダクトマネージャーが、エンジン車との違いを解説するワークショップが開催されました。大音安弘がレポートします。

伝統が受け継がれているというメッセージ

メルセデス・ベンツが誇る世界屈指のオフローダー『Gクラス』の新メンバーとなった『G580 with EQテクノロジー』は、Gクラスの歴史上初となるBEVだ。その特徴やエンジン車との違いをGクラス・プロダクトマネージャーであるトニ・メンテルさんが解説する、ワークショップがメディア向けに開催された。

メンテルさんは、2018年よりGクラスのセールスプランニング及びマーケットマネージメントのトップを担当。2021年からは現職となり、Gクラスの商品開発にも深く携わっている人物だ。

Gクラス・プロダクトマネージャーのトニ・メンテルさんによるワークショップをメディア向けに開催。
Gクラス・プロダクトマネージャーのトニ・メンテルさんによるワークショップをメディア向けに開催。    上野和秀

BEVとなるG580は、ディーゼルエンジン車G450dと比べても、外観上の差別は最小限に留められている。それはEVであっても、伝統の堅牢さや優れた悪路走破性などの魅力がしっかりと受け継がれていることを示すメッセージでもある。

もちろん差別化された部分もある。最も分かりやすいのがボンネット形状で、エンジン車よりも一段高くなった。これはエアロダイナミクス向上のためで、前方からの空気をボンネットからルーフへとよりきれいに流すのが役目だ。

さらにリアタイヤのフェンダーアーチに追加された専用エアカーテンも、タイヤまわりにおける空気の乱れの発生を抑えるもの。専用アンダーボディプロテクションも、車両下部の空気の流れをより整えることに貢献する。

これは静粛性向上のためでもあり、エンジンフード内部には、専用インシュレーターも追加。その結果、走行中の車内ノイズは、BEVの130km/h走行時とエンジン車の100km/hが同等と、より快適な高速巡行が可能となっている。

外観上のもうひとつ大きな特徴が、リアドアに装着されるデザインボックスだ。エンジン車ではカバー付きのスペアタイヤとなるが、BEVではキーロック連動式となる外部収納ボックスになった。これは普通充電用ケーブルやスノーチェーンなど、汚れたものを内部に持ち込まずに済むという配慮である。なお本国ではスペアタイヤ仕様も選べるが、日本では非設定だ。

また外観上の差別化アイテムとして、『コンセプトEQG』で話題となった光るフロントグリルは、日本でもオプションの『ブラックエクスエリアパッケージ』に含まれている。

渡河浸水性能はエンジン車を大きく上回る

メカニズムで最大の特徴である電動パワートレインは、4輪独立モーターと116kWhの大容量リチウムイオンバッテリーで構成される。それにもかかわらず、渡河浸水性能は、エンジン車の700mmを大きく上回る850mmを実現した。メンテルさんは、「それは走行時に、モーターとバッテリーが完全に水に浸かっていることを意味する」と自信たっぷりに語る。

その実現には、バッテリーパックに完全なシールを施し、浸水しない構造であることが必須となる。そのため、内部を50度に温めたバッテリーパックを0度の水に浸けるショックテストを実施。さらに川底の走行を再現するために、その状態でバッテリーパックを装着したフレームをねじるという専用試験を40回繰り返すことで、信頼性を確認したそうだ。

「走行時にモーターとバッテリーは完全に水に浸かっている」とメンテルさんは解説。
「走行時にモーターとバッテリーは完全に水に浸かっている」とメンテルさんは解説。    上野和秀

そのバッテリーを守るアンダーボディプロテクションは厚さ26mmで、カーボンファイバーを含む複合素材で作られ、50を超えるボルトで堅牢なラダーフレームに固定される。

メンテルさんによれば、「アンダーボディプロテクションの下から5cm角の台座で持ち上げても、全く問題ない。合計10tくらいの負荷が掛かっても耐えられる強度を誇る」と説明。さらにバッテリーパックとの間には約15mmの隙間があるため、衝撃でアンダーボディプロテクションが変形しても、バッテリーに干渉しないように設計されている。その上、軽量化のため重量も57kgにおさえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大音安弘

    1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃よりのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う。原稿では、自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。愛車は、スバルWRX STI(VAB)とBMW Z4(E85)など。
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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