【新フラッグシップCX-80に初試乗】ラージ商品群はマツダの将来を左右する大きな挑戦!

公開 : 2024.11.05 07:05

マツダの新たなフラッグシップとなる、CX-80に初試乗。スカイアクティブというキーワードが登場した2012年の初代CX-5以来、その多くを取材してきた編集部平井は、ラージ商品群はマツダの将来を左右する大きな挑戦だと思っています。初試乗の印象を通じて、その理由を語ります。

『飽くなき挑戦』という言葉を刻んだ石碑

マツダは常に挑戦を続ける会社だ。マツダの社内には今も、ロータリーエンジンの開発を指揮した山本健一さんの、『飽くなき挑戦』という言葉を刻んだ石碑が残されている。

2020年に100周年を迎えたマツダの歴史において、1991年にル・マン日本車初優勝をもたらした787B、バブル崩壊の影響を受けた多チャンネル化、そして近年躍進の原動力となったスカイアクティブ技術と魂動デザインなど、実にドラマチックな出来事やキーワードが多いと個人的に思っている。

3列シートを持つマツダの新フラッグシップ『CX-80』。ラージ商品群のうちの1台となる。
3列シートを持つマツダの新フラッグシップ『CX-80』。ラージ商品群のうちの1台となる。    平井大介

CX-80の原稿で、なぜこのような大げさな前置きを書いているのかといえば、現在進行中の『ラージ商品群』こそ、マツダの将来を左右する大きな挑戦だと思うからだ。

ラージ商品群とは、縦置きパワーユニットに対応した全く新しいプラットフォームを採用するモデルたちで、CX-60、CX-80、CX-70、CX-90の4モデルを新たに開発。ラージの名のとおり上級モデルとなり、これまでのFFベースのCX-5/CX-8よりもさらに上のクラスとなる、FRベースの高級車たちを作るという話である。

このうち日本市場は2列シートのCX-60と3列シートのCX-80を導入。既にCX-60は発売済みで、今回はCX-80を取材することができた。ちなみにCX-70とCX-90はサイズがひとまわり大きく、主に北米に向けたモデルたちだ。

昨今の流れで考えれば、一気に電動化しそうなところを、マツダはこの分野でトップランナーにならないと明言。マルチソリューションで対応していくとしているが(ロータリーエンジンもその一環だ)、各市場で政策も含めて状況が異なる中で、先行して投資するだけの余裕がないというのが本音だろう。

そこで今どき(と言っては失礼だが)直列6気筒を新開発してきたから驚いた。排気量は3.3リッターで、しかもガソリンとディーゼル両方。今回の試乗会に備えCX-60のディーゼルに乗っておいたが、そのフィーリングは最高で、エンジンだけでも買う価値ありと感じたほどだ。

なおラージ商品群ではほかにも、トルクコンバーターレスの8速AT、AWD、プラグインハイブリッド(PHEV)、マイルドハイブリッドも全て新開発となり、よくぞここまでの開発に踏み切ったと個人的には感心している。

突き上げを感じる足まわりに課題あり

徳島と神戸を往復する形で催された1泊2日のCX-80試乗会で、我々に割り当てられたのはソウルレッドクリスタルメタリックの『PHEVプレミアムスポーツ』(2.5リッター直列4気筒+モーター/価格719万9500円)と、ロジウムホワイトプレミアムメタリックの『XDハイブリッド・エクスクルーシブ・スポーツ』(3.3リッター直列6気筒ディーゼルのマイルドハイブリッド/同587万9500円)の2台。

残念ながら、事前にベストバイと予想していた『XD』(3.3リッター直列6気筒ディーゼル)は、くじ引きで外れてしまったので、これは後日の楽しみに残しておくことにする。ちなみに日本市場のCX-80はその3パワートレインが用意され、基本的にはAWDだが、XDのみ2WDをラインナップする。

試乗車の内装は、ナッパレザーに一部レガーヌと呼ばれる素材を組み合わせたタンカラー。
試乗車の内装は、ナッパレザーに一部レガーヌと呼ばれる素材を組み合わせたタンカラー。    平井大介

試乗会初日はPHEVだった。まず思ったのは内外装のデザインが素晴らしいこと。ナッパレザーに一部レガーヌと呼ばれる素材を組み合わせた内装のタンカラーはいかにも仕立てがよく、700万円オーバーの価格に見合うものだ。

PHEVはEVモードもあるので、街中での走行マナーはジェントルだ。車両重量は2240kgもあるが、バッテリーを床下に置く低重心さも、高級車然としたフィーリングにつながっているように思う。ただ、アクセルを踏み込んでいくとその重量が逆に気になり、2.5リッター4気筒自体の吹け上りはいいのだが、身のこなしがやや重く感じた。

そして足まわりも結構突き上げがあって、ボディの上下揺れの収まりも若干悪いように思える。そこで試乗後サスペンションの担当者に聞いたところ、CX-60よりはだいぶ改善したそうだ。

簡単に書くと、CX-60の足まわりはダイレクトさを追求するため、横揺れを抑えることを決め打ちで対策してきたが、突き上げが目立ってしまったそう。そこでCX-80ではスプリングレートを下げ、減衰を上げるなどして、突き上げを丸くし、収まりをよくすること目指したというが、個人的にはもうひと息という印象だ。

翌日試乗した直6ディーゼル(マイルドハイブリッド)は、やはり素晴らしいフィーリングだった。加速感も安定感もよく、いい意味で速度感を覚えさせないのは、CX-80がいいクルマである証拠のように思えた。残念ながら足まわりの突き上げがまだ感じるが、PHEVよりはだいぶ抑えた印象。車重が2100kgと140kg軽いのは無関係でないだろう。ちなみにXDはもう100kg軽いので、乗り味はもう少し期待できそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 撮影

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_

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