むしろ「モンデオ」の後継車? フォード・カプリ AWDへ試乗 目標はファミリースポーツカー

公開 : 2024.11.14 19:05

名車「カプリ」の名を得た電動SUVが登場 基礎骨格はVWのMEB エクスプローラーの双子 目指したのは家族層向けスポーツカー 姿勢制御や操縦性の洗練度は高い 英国編集部が評価

基礎骨格はVWのMEB エクスプローラーの双子

人生経験の長い読者なら、フォード・カプリという名車をご記憶かもしれない。2024年7月にまったく新しい電動クロスオーバーが発表され、この名称が正解なのか、英国では賛否両論が巻き起こった。

オリジナルのカプリの延長にあるという認識だったのか、話題を喚起するためのマーケティング上の理由だったのか。恐らく、フォードはどちらの意図も抱いていたはず。

フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)
フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)

少なくとも、マニアから羨望を集めそうな、ブルーカラーと表現される労働者層へ向けたクーペではないことは明らか。全長は4634mm、全幅が1872mm、全高は1626mmで、日産アリアとサイズ感は近い。

もちろん、パワートレインは電気モーター。車重は、オリジナルの2倍以上となる2174kg。ずんぐりとしたプロポーションで、40年前の記憶とは異なり、颯爽と走れるようには見えないだろう。

新しいカプリが基礎骨格とするのは、フォルクスワーゲン・グループが開発したバッテリーEV専用のMEBプラットフォーム。最近発表された、フォード・エクスプローラーも同様で、フォルクスワーゲンでいえばID.4とID.5の関係性に近いといえる。

目標はファミリー層向けスポーツカー

フォードで開発ディレクションを担ったウルリッヒ・ケスタース氏は、双子だと明言している。ただし、カプリとエクスプローラーはカタチがだいぶ違う。ルーフラインだけでなく、フロントガラスの位置も異なる。

開発プロセスは、カプリ主導で進められたらしい。「ファミリー層へ向けたスポーツカー」を目指して。軽快な走りと実用性を融合させるため、高い水準が自ずと求められ、クルマとしての能力の幅も広がったという。

フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)
フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)

駆動用モーターとバッテリーの構成は、シングルモーターの後輪駆動では、170psに52kWhか、286psに77kWhの2択。ツインモーターの四輪駆動では、339psに79kWhの容量が組み合わされる。これも、フォルクスワーゲン・グループ譲りだ。

前後のタイヤの間隔、ホイールベースは、カプリとエクスプローラーで同一。リアのオーバーハングが伸ばされ、全長は約200mm長い。クーペ風のシルエットと、広い荷室を叶えている。

電費を良くするため、カプリでは空力特性へ特に気が配られた。空気抵抗を示すCd値は0.26で、エクスプローラーの0.29より小さい。結果として、同じ容量の駆動用バッテリーでも、僅かに長い航続距離を獲得している。

サスペンションは、構造は共通するもののチューニングが異なる。快適性を担保しつつ、可能な限りフォードらしく楽しい走りを実現するため、エクスプローラー以上に開発には時間が割かれたという。このバランスは、古くから同社の強みとなってきた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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