むしろ「モンデオ」の後継車? フォード・カプリ AWDへ試乗 目標はファミリースポーツカー

公開 : 2024.11.14 19:05

インテリアはエクスプローラーと共通

スタイリングの印象は、見る人によって異なると思う。筆者は、エクスプローラーの方が記憶に残ると感じた。このクラスの電動SUVは選択肢が少なくないが、そこへ埋もれない、しっかりした個性があるからだ。読者はどうお感じだろう。

MEBプラットフォームは、3段階の最低地上高を想定して開発されている。カプリでは最も低い仕様が選ばれており、四輪駆動では10mm高くなる。それでも、エクスプローラーより低い。

フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)
フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)

ボディと異なり、インテリアはエクスプローラーと共通する部分が多い。ダッシュボード回りは、基本的に同一。荷室も含め空間は広々としていて、小物入れが多いことなど、優れた部分も一致している。

リアシートに座ると、僅かに頭上の余裕が少ないことがわかる。パノラミック・ガラスルーフはオプションだ。内装の雰囲気は、良くいえば落ち着いている。

ダッシュボード中央のタッチモニターは、15インチと巨大。車載機能の殆どは、このインフォテインメント・システムへ集約されている。操作性が良いとはいえず、大画面を有効には活かせていないが。

パワーは充分 姿勢制御や操縦性の洗練度は高い

運転した印象も、エクスプローラーと似ている。実際に乗り比べても、普通に認識できるほどの違いはないといっていい。だが、ライバルの中で1番動的能力が高いとは表現できないまでも、優れた体験を提供してくれる。

今回試乗したカプリは、ツインモーターの四輪駆動。パワーにまったく不足はなく、カーブでのトラクションも高く、キビキビと狙ったラインへ導ける。姿勢制御や操縦性の洗練度は高く、落ち着いてもいる。

フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)
フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)

ステアリングホイールは軽く操れ、反応は正確。気張るほどボディロールは増していくものの、しっかり抑制されている。運転の充足感は高い。

乗り心地は硬めだが、不快に感じるほどではない。英国の市街地では一般的な、傷んだアスファルトでは揺れが目立っていたけれど。

航続距離は、カタログ値で556km。実際にも、530km近くは走れる様子。充分な距離といえ、これまでの生活へすぐに馴染めるだろう。

英国価格は、エクスプローラーより約2000ポンド(約39万円)お高い。トリムグレードは、セレクトとプレミアムの2段階が用意される。

背が高く重たいフォード・モンデオの後継車?

電動クロスオーバーとして生まれ変わった、カプリ。背が高く重たくなった、フォード・モンデオの後継車のように筆者は感じた。ファミリー層向けのスポーツカーという、開発の狙いには届いていないかもしれない。

フォードへ期待するとおり、軽快で滑らかに走り扱いやすく、家族で移動するのに適した実用性は備える。製造品質もしっかり高い。とはいえ、ブルーカラーのドライバーズカーとまでは呼べないだろう。

フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)
フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)

◯:不満ない動力性能 感心するほど長い航続距離 優れた操縦性と姿勢制御
△:個性の薄いインテリア タッチモニターは扱いにくい エクスプローラーの方が個性的かも

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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