なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編

公開 : 2024.11.23 18:05

時代の流れに抗えず、不運にも消滅してしまった自動車メーカー/ブランドを、その代表的なモデルとともに振り返る。なぜ廃れたのか、名称の権利はいまどこにあるのかなど、短い解説付きで紹介していく。

名車今は亡きブランド

時代とともに市場は変化し、覇権を握っていた巨大企業でさえ、あっという間に倒れてしまうこともある。深い轍(わだち)にはまり、抜け出せないまま朽ち果てることは自動車業界では珍しくない。

今はもう存在しない企業の中には、すぐに忘れ去られたものや、素晴らしい技術やデザインを残してくれたものもある。今回は、消滅してしまった自動車メーカーやブランドを振り返り、その代表的なモデルとともに「最期」を紹介していきたい。

今は活動していないメーカーの歴史と代表的なモデルを紹介する。
今は活動していないメーカーの歴史と代表的なモデルを紹介する。

AMC:イーグル(1980年)

AMCイーグルは、本格的な四輪駆動システムと十分な最低地上高を頼りに、タフなトレイルや膝まで埋まる雪に挑んだファミリーカーだった。多くの点で、イーグルは現代のクロスオーバーの前身と言える。

今トレンドとなっているクーペSUVもまた、イーグルSX/4(次の写真)が先行していた。

AMC:イーグル(1980年)
AMC:イーグル(1980年)

では、AMCはどうなったのか?

同社は1979年にフランスのルノーに買収されたが、1980年代に燃料が比較的安くなったため、小型車中心のAMCは苦戦を強いられた。AMCを支持したルノーCEOのジョルジュ・ベッセ氏が1986年にテロリストに殺害されると、後継の経営陣はAMCへの関心を失い、1987年にクライスラーに売却した。

AMCイーグルSX/4
AMCイーグルSX/4

アンフィカー:モデル770(1961年)

1961年に発表されたアンフィカー・モデル770は、ボートと自動車のハイブリッドであり、直接のライバルはいなかった。リアに搭載されたトライアンフ製4気筒エンジンで、後輪またはリアバンパー下に見える2軸のプラスチック製スクリュープロペラを駆動し、前輪で陸上・水上を問わず操舵を行う。驚くほど多用途で、ありがたいことに完全防水だった。

大半は米国で販売され、そのうちの1台は、当時のリンドン・ジョンソン大統領(写真)が愛用した。彼は何も知らない訪問者を乗せ、テキサス州の牧場でブレーキが故障したふりをして湖に突っ込むという、子供のようないたずらを楽しんでいた。

アンフィカー:モデル770(1961年)
アンフィカー:モデル770(1961年)

では、アンフィカーはどうなったのか?

モデル770のような水陸両用の乗用車の市場は、アンフィカーを財政的に維持するには小さすぎた。BMWの大株主として知られるクヴァント家所有の会社によって西ドイツで約4000台が生産された後、1967年に終了。

アンフィカーはモデル770を廃止した後、自動車業界を後にした。今日に至るまで、水陸両用乗用車を大量生産した会社は他にない。

アンフィカー・モデル770
アンフィカー・モデル770

記事に関わった人々

  • AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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