もの凄く「絵になる」クルマ ジャガーEタイプ S1(1) そのすべてへ夢中になった15歳

公開 : 2024.11.23 17:45

英国人ジャーナリストが30年以上所有するジャガーEタイプ スポーツカーへ興味を抱いたのは自然な流れ スタイリングにもメカニズムにも、夢中なまま 英編集部が極上の1台をご紹介

15歳の頃、そのすべてに夢中になった

英国の放送局、BBCの海外特派員も務めた著名なジャーナリスト、マイケル・バーク氏。ジャガーEタイプが華々しくデビューを飾った1961年には、ジェームズ・ボンドの原作を好む15歳の青年だった。

「その頃暮らしていたのは、ローバーの工場があった(グレートブリテン島中部の)ソリハル。街を走るクルマは、ブラックばかりでしたね」

ジャガーEタイプ S1(1962年式/英国仕様)
ジャガーEタイプ S1(1962年式/英国仕様)

「家族でドライブする時は、スピードメーターが時速60マイル(97km/h)を超えているかどうか、いつも確かめていました。メルセデス・ベンツなどはたまに見かけましたが、殆どは国産車。外国のクルマは珍しかった時代です」

「そんなタイミングで、Eタイプが登場したんです。そのすべてに夢中になりましたよ」

映画「007」のボンドカーに選ばれることはなかったものの、高度な技術と実際の速さ、美しい姿などが、若きバークへ強い印象を刻んだ。理想的なスポーツカーとして、当時のテレビ番組に登場することは少なくなかった。

それから30年後、ニュース番組のキャスターへ就任。南アフリカで問題化していた人種差別、アパルトヘイト制度に対する積極的な報道などでキャリアを積み、経済力を掴んでいった。念願だった、Eタイプの購入を実現させた。

バブル状態にあった中古車価格が急落

今回ご紹介するダークブルーの1台が、まさにそれ。アルミニウム製のダッシュボードを備える1962年式のS1 クーペで、最近見事にレストアされている。

「南アフリカからグレートブリテン島へ戻り、人生を再構築しようと考えたんです」。78歳を迎えたバークが、落ち着いた口調で話す。

ジャガーEタイプ S1と、オーナーのマイケル・バーク氏
ジャガーEタイプ S1と、オーナーのマイケル・バーク氏

「テレビ番組のプレゼンターに就任した30年ほど前、バブル状態にあったクラシックカーの価格が急落。運良く、2万5000ポンドで買えたんです。悪くない取引きでした」

彼が購入を決める2年前、AJB 396Aのナンバーを付けたこのEタイプは、自動車雑誌の表紙を飾っている。ミルレーン・エンジニアリング社という、小さな専門ショップによってレストアされた直後の設定価格は、6万5000ポンドだった。

「もの凄く絵になるクルマですよね。どの角度から見ても悪くない。現代のクルマと比べると、幅の細さには驚きますが。後ろ姿は、おもちゃに見えるくらい。正面はライトのフェアリングのおかげで、見栄えするようになりました」

「ヘッドライトの明るさは、初期のS1よりS2の方がずっと良いです。これは、蝋燭で照らしているように暗いんですよね」。歴代のジャガーで最もアイコニックなスタイリングを称賛しつつ、不満も認める。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ジャガーEタイプ S1の前後関係

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