ジャガーEタイプ S1(2) スタイリングにもメカニズムにも魅了! 人生へ大きな影響を与えた1台

公開 : 2024.11.23 17:46

全体的なボディの酸化は抑えられていた

「普段はガレージへ仕舞っていて、殆ど外は走っていなかったので、目立つような錆はありませんでした。でも、あちこち塗装がひび割れていたのは間違いありません」

彼の購入前、英国のミルレーン・エンジニアリング社がレストアしたのは、1980年代の終り。30年以上、AJB 396AのEタイプは目立った手入れが施されていなかった。その間にどの程度劣化しているのかは、モートンにとっても興味深いことだったようだ。

ジャガーEタイプ S1(1962年式/英国仕様)
ジャガーEタイプ S1(1962年式/英国仕様)

ボディのレストアを請け負ったのは、Eタイプを専門に扱うクレイトン・クラシックス社に在籍した経験を持つ、ポール・テイラー氏。2014年に、自身のワークショップを立ち上げたという。板金的な修理だけでなく、腐食防止に関する技術にも造詣は深い。

バークのEタイプは、酷い状態ではなかったが、湿気を招きがちな古いパテがサイドシルへ用いられていると判断。ほぼ30年間乗られていなかったことで、全体的な酸化は抑えられていることも明らかになった。

Eタイプは、現在へ至るまでに2度や3度のレストアを受けている例が珍しくない。しかし、彼のクルマは1度だけなことも判明した。

スタイリングにもメカニズムにも夢中なまま

ステアリングホイールを、バークが優しく握る。「運転に難しさはまったくありません。ダッシュボードの雰囲気と、ドライビングポジションが好きですね。モス社製のトランスミッションも、ミュートラルで一拍おけば、問題なしです」

ストレートカット・ギアが組まれる1速から、バークが巧みにシフトアップする。インテリアトリムの殆どはオリジナル。S1は新調されている場合が多く、その過程で当時のニュアンスが失われてしまうのだが、彼のEタイプは異なる。

ジャガーEタイプ S1と、オーナーのマイケル・バーク氏
ジャガーEタイプ S1と、オーナーのマイケル・バーク氏

「このラジオも、モトローラ社製のオリジナル。内部が温まるまで、少し待つ必要があります。古い番組を受信するようなものだと考えれば、気になりません」。3年間に及ぶレストアを終え、帰ってきたEタイプに彼は深く満足している。

紳士的な作業で仕上げられたこのクルマの今後へ、考えを巡らせるようになったそうだ。「ただ状態を保つだけへ戻ったら、レストアは意味のないものになってしまう。もっと乗った方が良いですよね」

「今はまだ、所有していたいと思います。でも遅かれ早かれ、売ることになるでしょう」。若々しく見えるバークの自宅には、充分に広いガレージがあり、資金的に維持が難しいわけではない。手放すのは、健康上の理由になるはず。

Eタイプのように、人生へ大きな影響を与えるほどのクルマは、今後登場するだろうか。バークは約60年前のジャガーへ、今でも特別な気持ちで接している。リスペクトを持って。レストアを経て、スタイリングにもメカニズムにも、改めて魅了されたようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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