フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ

公開 : 2024.11.20 19:05

小柄なボディ 乗り心地と操縦性のバランス

久しぶりの505 GTiは、運転が楽しい。フロントノーズが直感的に反応し、ステアリングホイールには明瞭に情報が伝わる。ボディロールは苦笑いするほど大きくても、コミュニケーション力に長け、カーブへ突っ込める。安定性も高い。

グレートブリテン島の一般道の最高速度、97km/h以下で思い切り楽しめる。現代のモデルでは得難い喜びだろう。5速MTの2速と3速を駆使して、全力を引き出せる。4気筒のザラ付いたノイズも、気分を盛り上げる。

グレーのプジョー508 PSEと、ブラウン・シルバーのプジョー505 GTi
グレーのプジョー508 PSEと、ブラウン・シルバーのプジョー505 GTi

路面と息を合わせるように、今では小柄なボディが流れ、運転席からの広い視界が自信を高める。衝突安全性は低くても、乗り心地と操縦性のバランスという、プジョー特有の強みを堪能できる。動力性能自慢でなくても、優れたクルマなことは明らかだ。

かたや508 PSEには弱点もあるが、見過ごせる程度。享受できる複層的な運転体験を知ると、スパイスの効いた電動のプジョーが登場することを、強く祈りたくなる。

パワーに不足はなく、素早く目的地を目指せる。ただし、コミュニケーション力は高くはない。ステアリングの反応は、少しクイックすぎる。それでもグリップバランスに優れ、臆することなく振り回せる。

基本的には前輪駆動がベース。BMW 340iのような楽しさはないが、積極的に運転すれば自然と笑顔になれる。

505 GTiでは何ごともない凹凸でも、508 PSEの20インチ・アルミホイールは衝撃を伝える。技術者の手で、サスペンションが引き締められた証拠でもある。

フランス出身のスター選手と一緒な気分

とはいえ、ワイドなミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤを履くモデルとしては、落ち着きのある側。現実的に30kmほど電気だけで走れる能力は、1866kgある車重を納得させる。

エレクトリックかハイブリッド・モードなら、乗り心地は充分しなやか。エンジンが目覚めても、8速ATは機械任せが良い。カーブの入り口でシフトパドルを連続して弾いても、望んだ段数まで落ちない時がある。

プジョー508 PSE(英国仕様)
プジョー508 PSE(英国仕様)

プラグイン・ハイブリッドらしい、フラストレーションも伴う。プジョーRCZ Rには、269ps仕様の同じ4気筒エンジンが載っていた。508にもそれ単体で積まれていれば、きっと今以上にシャープなサルーンになったはず。

しかしそれでは、世界耐久選手権(WEC)を戦うプロトタイプレーサー、9X8のイメージを共有できない。重要なメッセージを伝えられない。

軽くて簡素な、505 GTi。対する508 PSEは重くて複雑だが、美しさでは勝るだろう。カナードの付いたエアロキットは華やかで、フレームレス・ウインドウがエキゾチックな雰囲気を生み出す。知る人ぞ知るプジョーだ。

筆者は508 PSEを1週間お借りしたが、頻繁に駐車場で声をかけられた。英国では新車で注文できなくなったが、勇気を出して手を伸ばしてみてはいかがだろう。フランス出身のスター選手と一緒にお出かけするような、少し特別な気分を味わえるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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