独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から

公開 : 2024.11.24 17:45

筆者も魅了されたCX パラスのスタイリング

当時の英国価格は、3775ポンド。メタリック塗装やパワーウインドウなどが、1970年代の豊かさを表現していた。シトロエンは、「比類ない優雅さと快適性、安全性を提供する」と誇らしげに主張した。

ハンソンは2019年に購入後、2年間を費やしレストアしている。運転席へ座ると、50年間の運転環境の変化へ感心してしまう。フロントシートの間に位置するレバーで、車高を調整できる。

シトロエンCX 2200スーパー(1974〜1989年/英国仕様)
シトロエンCX 2200スーパー(1974〜1989年/英国仕様)

オプションのパワーステアリングは装備されず、低速域ではやや重め。ブレーキペダルはキノコ型。ハイドロの不調を教える、STOPと光る警告灯に、ヒヤヒヤしたドライバーもいただろう。

このCXのサスペンションとブレーキは良く機能し、1975年の英国ではライバル不在といえた運転体験へ浸れる。稀に出くわす、鋭い隆起部分には手を焼くが。

ポール・ヘガティ氏が所有する、シルバーの1976年式CX パラスの印象もほぼ同じ。トップグレードに当たるモデルで、オリジナル状態がしっかり保たれている。

若かりし頃の筆者は、このスタイリングへ魅了されていた。未来的なホイールキャップを履いたCXが、錆びかけたモーリス・オックスフォードのタクシーの間をすり抜けていた。サブカルチャー、テディボーイズの終焉を示すような、別世界の姿に思えた。

当時の自動車ジャーナリストの1人は、誰もが乗りたいと思えるクルマではないと評している。しかし、CX パラスは英国の自動車市場で新たな競争相手になった。

オプロンが導き出した中央が凹んだリアガラス

ヘガティの1台は、恐らくグレートブリテン島最古のパラス。2024年に開かれたシトロエン・カークラブの50周年記念イベントでは、ベスト・イン・ショーに輝いている。彼が購入したのは2022年。最近、2200 CXのナンバープレートも取得したらしい。

装備はゴージャスで、内装はベロア仕立て。足もとには長い毛足のカーペットが敷かれ、マップライトも備わる。灰皿はマット仕上げのアルミニウム製。ホイールカバーは専用設定だった。

シトロエンCX 2200パラス(1974〜1978年/英国仕様)
シトロエンCX 2200パラス(1974〜1978年/英国仕様)

リアガラスは、中央が凹んでいる。オプロンが空気抵抗を改善するため導き出した処理で、後ろ姿にも小さくない話題が集まった。

パラスは、社会的地位が高いことを示せただけではない。パワーステアリングが標準装備され、一層快適でもある。ヘガティは、これがなければCXは完成しないと考えている。

「1976年当時、セルフセンタリング機能付きのパワステを備えたモデルは、他に何台あったでしょう。以前からシトロエンに乗ってきましたが、これは初めて購入したCX。想像以上に満足しています」。目を輝かせながら、彼が話す。

「シトロエンが、6気筒エンジンの搭載計画を実現しなかったことは残念。(プジョールノーボルボによる)共同開発のPRVユニットを積んでいれば、CXは更に良くなったはず。プジョーは、高度な技術は独自ブランドだけに留めたかったのでしょう」

この続きは、シトロエンCX 5台を乗り比べ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

シトロエンCX 5台を乗り比べの前後関係

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