1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用

公開 : 2024.11.24 17:46

1度運転しただけでは好きになれない

「CXは、1度運転しただけでは好きになれません。でも2回目には、もう1回運転したいと思うようになります。それ以降は、他のクルマへ戻れなくなります」。誰かから聞いた話しだというが、ピューはこれに同意する。

「驚くほどスムーズ。本当に、魔法の絨毯のような乗り心地で、快適な旅を叶えてくれます。とても長いボディですが、フロントへしっかりリアが追従していきますね。自分は、駐車には慣れました。立体駐車場は選びませんけどね」

シトロエンCX プレステージ・ターボ2(1985〜1989年/英国仕様)
シトロエンCX プレステージ・ターボ2(1985〜1989年/英国仕様)

そして今回5台目のCXとなるのが、2.5 DTRターボ2 ファミリアール。クロスオーバーやSUVが溢れる2024年でも、しっかり存在感を示すステーションワゴンだ。

CXのワゴンボディは1975年に登場しているが、サルーンの生産終了を迎える1989年末に至るまで、ほぼライバルは存在しなかった。フォードボルボも、180km/hで走れる7・8シーターの上級ステーションワゴンを設定していなかった。

ルーフラインが延長され、リアシートの後方に2名か3名が座れる3列目シートが据えられている。その後ろには、少しの荷物を詰める荷室も備わる。2列目シートも折りたためば、荷室の奥行きは2.1mに迫る。

「2024年に購入したばかり。6名で700km以上の旅を、既に数回楽しみました。来年のル・マン24時間レースにも、これで向かおうと思っています。キャンプ道具を載せて、快適に移動できると信じています」。オーナーのパトリック・カーニー氏が笑顔で話す。

シトロエンと上手に暮らせるか、そうでないか

これは1989年式だが、その古さを感じさせないという。サルーンと引けを取らない走行マナーには、今でも驚くとか。

メーターパネルには、一般的な円形のメーターが並ぶ。車高調整は、ダッシュボード上のスイッチで行う。初期のCXに備わる特徴のいくつは失われているが、それでも本来の魅力は薄れていない。

シトロエンCX 2.5 DTRターボ2 ファミリアール(1983〜1991年/英国仕様)
シトロエンCX 2.5 DTRターボ2 ファミリアール(1983〜1991年/英国仕様)

このファミリアールの弱点といえるのは、オプションで設定された実務的なディーゼルターボエンジン。カーニーのクルマにも積まれているが、1980年代半ばを過ぎた頃には、古びたユニットという印象を放っていた。

パワーには不足なかったとしても、ノイズは大きめ。耐久性も高いとはいえなかった。シトロエンの専門家によると、シリンダーブロックの素材が多孔質で、不調を招くらしい。喜ばせたのは、シトロエンのサービス部門だけだったようだ。

とはいえCX ファミリアールは、次期モデルのXMにブレークが登場する1991年まで、生産が続いた。本物のシトロエンの、有終の美を飾るように。

CXの末期に、AUTOCARはこうまとめている。「シトロエンと上手に暮らせるか、そうでないか。従来どおり、その中間はありません」

著名な自動車ジャーナリスト、LJK.セトライト氏は、「知性派のためのクルマ。条件に合致する人は多くないでしょう」と記している。CXを溺愛するマニアにとって、これ以上の褒め言葉はないかもしれない。

協力:シェブロニック・センター社、ファームーア貯水池、シトロエンCX UK非公式オーナーズクラブ

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

シトロエンCX 5台を乗り比べの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事