写真で見る 歴代の米国大統領専用車 極厚防弾ガラスに超強力エンジン、最高レベルのセキュリティ

公開 : 2024.11.07 18:05

米国で第47代大統領が選出された。大統領の乗るクルマは、普通とは異なる特注装備と厳重なセキュリティ対策が施されている。ここでは85年に及ぶ大統領専用車の歴史を振り返ってみたい。

85年の歴史を振り返る

ホワイトハウスやエアフォース・ワンに次いで、米国大統領にまつわるものといえば、やはり彼らが乗る黒いリムジンだろう。

米国の大統領専用車は「プレジデンシャル・ステートカー(Presidential State Car)」と呼ばれ、初代の誕生から今年で85年を迎える。去る11月5日火曜日、大統領選の投開票が行われ、第47代大統領が選出された。そこで今回は大統領専用車の歴史を振り返り、長年にわたって「世界で最も権力のある人物」を乗せてきたクルマを一緒に見ていこう。

1981年1月20日、ワシントンDCでの大統領就任パレードに参加したロナルド・レーガンとナンシー夫人。
1981年1月20日、ワシントンDCでの大統領就任パレードに参加したロナルド・レーガンとナンシー夫人。

リンカーン・サンシャイン・スペシャル(1939年)

大統領専用車として使用された最初のクルマは、フランクリン・ルーズベルト大統領が乗っていたリンカーン・サンシャイン・スペシャルだ。独自の個性を獲得した最初の大統領専用車と言われており、シークレットサービスの仕様に合わせて作られた最初の公用車でもある。

リンカーンの高級車Kシリーズをベースにした特注のコンバーチブルで、ルーフを開放できることから「サンシャイン・スペシャル」と呼ばれるようになった。専用車への改造はニューヨーク州バッファローのブルン&カンパニー社が行った。

リンカーン・サンシャイン・スペシャル(1939年)
リンカーン・サンシャイン・スペシャル(1939年)

リンカーンの6.8L V12エンジン「Lヘッド」を搭載し、最高出力150psを発生する。当初、同車にはセキュリティ機能は装備されていなかったが、1941年12月7日に起きた日本軍による真珠湾攻撃の後、装甲ドア、防弾タイヤ、1インチ厚の窓、銃器用の収納コンパートメントが追加された。

1945年4月のルーズベルトの死後、同車は新大統領ハリー・トルーマンが使用した。1948年に現役を引退し、現在はミシガン州ディアボーンのヘンリー・フォード博物館に展示されている。

リンカーン・カスタム(1942年)

リンカーン・カスタムはロングホイールベースのセダンで、ルーズベルトやトルーマンが使用した。サンシャイン・スペシャルのようにパレードや集会で大統領の姿を見せることができないハードトップ・セダンであったため、大統領の間ではあまり人気がなかった。最高出力120psを発生する4.8L V12エンジンを搭載している。

リンカーン・カスタム(1942年)
リンカーン・カスタム(1942年)

リンカーン・コスモポリタン(1950年)

サンシャイン・スペシャルの後継として登場したのが、リンカーン・コスモポリタン・コンバーチブルだった。トルーマン大統領は、最高出力152psの5.5L V8エンジンを搭載したコスモポリタンのロングホイールベース版を特別に改造して使用していた。

同車には、ゼネラルモーターズが1939年に初めて導入し、リンカーンのような競合他社にも広く販売された、ヘビーデューティ仕様の「ハイドラマチック」トランスミッションも搭載されている。

リンカーン・コスモポリタン(1950年)
リンカーン・コスモポリタン(1950年)

1954年、ドワイト・アイゼンハワー大統領は、雨天時にも観衆から見えやすいように、コンバーチブル・ルーフの後部を透明なプレキシガラス製ルーフに交換させた。これは「バブルトップ」として知られるようになり、1965年まで使用された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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