【中国のデザイナーたちも嫉妬?】新型電動車マツダEZ-6はいかにして魂動デザインを実現したか

公開 : 2024.11.10 11:45

マツダEZ-6は、マツダと中国での合弁事業パートナーである重慶長安汽車の協力のもと、長安マツダ汽車が開発、製造を行う新型電動車です。そのデザインについて、内田俊一がインタビュー。ベース車がある中、どう魂動デザインを実現したかに迫ります。

ベース車がある中での開発

マツダと中国での合弁事業パートナーである重慶長安汽車の協力のもと、長安マツダ汽車が開発、製造を行う新型電動車の第1弾で、CDセグメントのサルーン、『マツダEZ-6』が北京モーターショーで発表されたのは既報の通りだ。そのデザインについて話を聞くことができたので、まとめてみたい。

EZ-6のデザインは主にマツダ側で行われた。このEZ-6にベースモデルがあることはあまり知られていないかもしれない。それは、長安汽車のプレミアムブランド『深藍』(ディーパル)のセダン、『SL03』だ。この骨格を使いながら魂動デザインを纏わせたのが、EZ-6といっていい。

マツダEZ-6は、いかに魂動デザインを成立させたのか。チーフデザイナーの岩内義人さんにインタビュー。
マツダEZ-6は、いかに魂動デザインを成立させたのか。チーフデザイナーの岩内義人さんにインタビュー。    マツダ

骨格とは四輪の位置から始まり、AピラーやCピラーの位置や角度などで、それらは変えられないことになる。さらにバッテリーを搭載することから車高が高くなってしまい、ボディが分厚く背も高いということも大きなハードルとなった。

さて、こういったハードルをクリアしながらいかに魂動デザインを成立させたのか。チーフデザイナーの岩内義人さんによると、まず「ヘッドランプからドアハンドルを抜け、リアコンビランプまでのモチーフを一直線に並べることで伸びやかさを表現しました」という。

一方、魂動デザインでは通常、Cピラー周りからリアホイールに向かって力がかかるような表現をとるものだが、EZ-6ではそうせず、「思い切ってストレートに後ろに抜きました」と表現方法を変えたことを明かす。同時にサイドシルまわりのラインも極力地面と水平にすることで、よりボディを薄く、かつ伸びやかさを強調したのである。

長くスリークに見せるデザインテクニック

実は岩内さんはベースモデルを見て、「結構ショックが大きくて、これはすごいなと思ったんです。新しさも感じさせていましたので、中途半端な変え方をしてOEMで出したら恥をかくなと。頑張って飛び越さないと絶対ダメだと、やるからにはフルでやろうと思いました」と語る。

そこでさらに、ベースモデルで感じていた分厚いボディをそう見せない工夫があった。通常であれば骨格を見直し、背を低く、ボディ自体を薄く見せるようにするのがマツダ流だ。しかしそれができないので、岩内さんによると2つテクニックを使ったという。

「あらゆるモチーフで水平方向に細かく分断して、なるべく視線が前後方向に抜けるように見せるようにしました」と岩内さん。
「あらゆるモチーフで水平方向に細かく分断して、なるべく視線が前後方向に抜けるように見せるようにしました」と岩内さん。    マツダ

まずひとつは、「あらゆるモチーフで水平方向に細かく分断して、なるべく視線が前後方向に抜けるように見せるようにしました。これにより前後方向に長いカタマリに見えてきます」。例えば、「人間でも横ストライプを着ると太ってボールドに見え、縦ストライプを着るとスリムに見える。これと同じ効果を利用しています」と岩内さん。

もうひとつは、先に記した前後ランプとドアハンドルを1本の流れの中に収め、かつ、ロア部分で加飾や黒落としを連続させて長尺モチーフにすることだ。

この上下2本の長尺モチーフで全長をくまなく使い切り、圧倒的な長さ感を演出させた。この結果、「車両を薄く、低く見せるという錯覚を与え、高さや厚みがあまり気にならなくなるのです」と岩内さん、例え話だが、「大谷選手は実際には太く逞しい体躯なのですが、背が高いのでスマートに見えますよね、そんな感覚です」とのことだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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