メルセデス・ベンツ次期「CLA」がEV走行の新記録樹立 ポルシェを凌駕、24時間で3700km走破

公開 : 2024.11.08 06:25

メルセデス・ベンツの次期「CLA」プロトタイプが24時間で3717kmを走破し、ポルシェ・タイカンの記録を打ち破った。パワートレインの高効率化と充電性能の向上を実現したという。

約10分間の充電を計40回行う

メルセデス・ベンツは、第3世代となる次期「CLA」のテスト走行でEV航続距離の新記録を樹立した。

空力的に洗練されたEQXXコンセプトによって確立されたベンチマークを基に、次期CLAのプロトタイプはイタリアのナルド・テストコースで24時間で3717km(2309.6マイル)を走破した。

メルセデス・ベンツ次期CLAのプロトタイプ
メルセデス・ベンツ次期CLAのプロトタイプ    メルセデス・ベンツ

これは、2019年に同じコースでポルシェタイカンが記録した24時間走行距離3425kmを上回るものだ。

メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー(MMA)プラットフォームをベースとする次期CLAは、同社が2026年末までに発売を予定している4車種の新型コンパクトEVの第1弾である。CLAシューティングブレークや、EQAおよびEQBの後継車も準備中だ。

この4車種はすべて、メルセデス・ベンツが量産車として初めて採用した新開発の800V電気アーキテクチャー、新世代の電気モーター、ヒートポンプ、MB.OSオペレーティング・システムを備えている。

今回の記録挑戦走行に使用されたCLAのプロトタイプは、すでに耐久性テストが行われている量産型ベースのテスト車両群の中から選ばれた1台だ。挑戦走行ではバックアップのプロトタイプと並走した。両車にはドライバーと助手席乗員のほか、データロガーなどの計測機器が搭載されていた。

記録の鍵となったのは、「プラグ・アンド・ダッシュ」と呼ばれる、走行時間を最大化するために考案された巧みな充電戦略だ。長時間の走行でエネルギーを使い果たしてから充電するのではなく、短時間の走行と頻繁な充電を繰り返した。

メルセデス・ベンツの電気駆動システムの開発リーダーであるクリスチャン・ファイファー氏は、「定期的な充電は、距離と時間効率の両面で決定的なアドバンテージをもたらす。つまり、1分間の充電で何km走行できるかということだ」と述べた。

CLAのプロトタイプは、24時間の挑戦走行中に約10分間の充電を計40回行った。

全体として、24時間の28%近く、約6時間40分にわたって停車していた。このような短時間だが定期的な停車によって、DC(直流)システムでの高い初期充電率を活かすブースト機能を利用できた。

次期CLAは来年導入、ハイブリッドも登場

メルセデス・ベンツは次期CLAの充電性能をまだ明らかにしていないが、250kW前後での充電が可能で、さらに50kWのブースト機能によって短時間であれば300kWに達することができると以前示唆している。これにより、わずか15分で400kmの走行が可能になる。

リチウムイオンバッテリーのエネルギー容量も未公表だが、89.6kWhと言われている。これにより、平均消費電力は約8.3km/kWh、航続距離は最長750kmとなり、量産EVの中でトップクラスの効率性と航続距離を実現するという。

メルセデス・ベンツ次期CLAのプロトタイプ
メルセデス・ベンツ次期CLAのプロトタイプ    メルセデス・ベンツ

市販バージョンでは、より安価なオプションとして、エネルギー密度の低いリン酸リチウムイオンバッテリーも用意される見込みだ。

今回の記録挑戦で使用されたCLAは、リアに1基の同期電動モーターと2速トランスミッションを搭載した後輪駆動モデルである。ここでも技術的な詳細はまだ明らかにされていないが、標準車で最高出力205ps、AMGブランドのツインモーター四輪駆動モデルでは合計出力545psのドライブトレインを開発中とされている。

CLAは「エレクトリック・ファースト」モデルとして開発されたものの、マイルドハイブリッドの2.0L 4気筒ターボガソリンエンジンの販売も予定している。

メルセデス・ベンツが開発した新しい4気筒エンジンは、中国の自動車メーカー吉利汽車とフランスのルノーが共同で運営するホース・パワートレイン社によって、中国工場で生産される。リークされた仕様によると、エンジンは社内コードネームで「M252」と呼ばれ、開発初期段階で最高出力252ps、最大トルク36.8kg-mを発生するようだ。

メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス最高経営責任者(CEO)は次のように述べた。

「CLAによって、メルセデス・ベンツは新時代を迎える。このセグメントにおいて、お客様がメルセデスに期待するあらゆる側面を大幅に向上させる」

「モジュラープラットフォームにより最大限の柔軟性を確保する。CLAでは、最先端の電動ドライブトレイン仕様と、ハイブリッド化されたエンジン仕様の両方を提供することができる」

「また、当社のオペレーティング・システムであるMB.OSによって、これまでで最もインテリジェントなクルマとなる」

第3世代CLAは来年公開される予定で、欧州での販売は2025年末までに開始される。当初はEVのみで、約6か月後にハイブリッド車が追加される予定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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