「マジか…」記者が震えた 2024年最も印象に残ったクルマの記事 3選

公開 : 2024.12.30 18:05

EV需要の停滞、デザインの新しいトレンド、朽ちた廃車の山……。今年一番印象に残った自動車の記事を、AUTOCAR JAPANのライター(林 汰久也)が振り返る。

驚きと倦怠感に満ちた2024年

今年の自動車業界を振り返る――というと少し話が大きくなり過ぎてしまうので、とりあえず僕がライターとして担当した記事を振り返ることにしたい。その方が具体的だし、身の丈に合っているので書きやすいと思う。

まず僕はこの1年で、おおよそ800本の記事(正確な本数は未確認)をAUTOCAR JAPANに投稿させていただいた。そのうち99%が、本家である英国のAUTOCAR UKが書かれた英語記事の翻訳だ。欧州で発表された最新モデルのニュース、技術解説、ランキング、過去の名車特集など、その内容や性質はさまざまだった。残る1%は、一から書かせていただいた僕のオリジナルの記事で、ニュースと特集が半々だった。

2024年のクルマ関連の記事で特に印象的だった3本をピックアップした。
2024年のクルマ関連の記事で特に印象的だった3本をピックアップした。    テスラ

これらをざっくりと振り返ると、自動車の歴史と伝統を上書きするような出来事が多かったように思う。ポルシェ911のハイブリッド化、メルセデス・ベンツGクラスのEV(予想と異なり、EQGという車名は与えられなかった)、中国メーカーの拡大。さらに、世界的なEV需要の成長鈍化、ドイツ大手フォルクスワーゲンの不調、何百万台にも影響が及んだ日本国内メーカー5社の認証不正など、業界全体を揺るがすような “大事件” も起きた。

このように偉そうなことを書くと、「お前は何もわかっていない」、「自動車業界を何と心得る」とお叱りを受けそうなのだが、あくまでも僕個人の感覚としては、新しいデザインやテクノロジーが次々と登場した新鮮な驚きと、今ひとつパッとしない倦怠感みたいなものが1年を通して共存していたように思う(そうでないという方がおられても、反論するつもりは一切ありません)。

今回は年末特集ということで、特に印象に残った記事を3本選び、そこから少しだけ話を広げながら、2024年が(僕の主観で)どういう年だったのかを振り返る。

1:EVの快進撃と停滞 テスラ・モデルYが前年ベストセラー車に

【世界で最も売れたクルマ EVとして初、120万台達成 「RAV4」超えたテスラ】(1月26日掲載)

今年最初の衝撃は、テスラの快進撃を伝えるものだった。去る2023年の車種別の新車販売台数で、テスラのEV「モデルY」が王者トヨタを抜いて世界トップに躍り出たのだ。2位のトヨタ「RAV4」も107万台(前年比6万台増)と好調だったが、モデルYは圧倒的で、120万台以上が売れた。

テスラ・モデルYは2023年の世界販売台数で1位となった。
テスラ・モデルYは2023年の世界販売台数で1位となった。    テスラ

これで2024年の世界市場はEV化まっしぐら……と思いきや、そうは問屋が卸さない。むしろEVへの需要は踊り場を迎え、売り上げは伸び悩み、多くの企業を困らせた。メルセデス・ベンツやトヨタはEVの販売計画を修正し、以前よりも控えめな目標とした。フォルクスワーゲンも苦戦し、ドイツ国内工場の閉鎖やリストラを検討し始めた。テスラですら、全従業員の10%の削減に追い込まれた。

そのような状況の中で、米国の新興企業フィスカーの破産(6月)は、避けられない運命だったのかもしれない。僕はフィスカーの実車に触れる機会には恵まれなかったが、少なくともデザインや機能面では面白い提案をされていたと思う。創業者のヘンリック・フィスカー氏にとって2度目の挑戦であり、僕も少し期待して見守っていただけに、破産の知らせは個人的にショックだった。

当事者に対して礼を欠いた表現になってしまうが、一時期は雨後の筍のように生まれていた新興EVメーカーたちが、今ではかなりの数を減らした(あるいは音沙汰がなくなった)ことから、ほとんど “ふるい” にかけ終わったのではないかと思う。もちろん、これは今年に始まったことではないけれど。

2024年は、特にEVを扱う方たちにとっては厳しい1年だったはずだ。2025年も、残念ながら、おそらく気が休まることはないだろう。せめて体調を崩されませんように、と願うばかりである。

記事に関わった人々

  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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