「サンクターボ」遂に復活? アルピーヌA290へ試乗 EVでもホットハッチを諦める必要ナシ!

公開 : 2024.11.08 19:05

公道で不満ないパワー 乗り心地は穏やか

さて、確認はこのくらいにして発進。今回試乗したのは、220psのA290だ。0-100km/h加速6.4秒と主張されるが、駆動用モーター自体は180psのユニットと同じ。ソフトウエアで、最高出力が調整されている。

動力性能は、公道用のモデルとして不満なし。レスポンシブで、穏やかな発進も容易。有り余るほどではないが、必要なパワーを即座に引き出せる。かつてのルノー・クリオ(ルーテシア) 197のように、変速ミスの心配もない。

アルピーヌA290 GTS(欧州仕様)
アルピーヌA290 GTS(欧州仕様)

最大トルクは30.4kg-m。旋回中にトルクステアを招いたり、荒れた路面でフロントタイヤを暴れさせるのに、充分なたくましさ。リミテッドスリップ・デフはないが、ブレーキ制御によるトルクベクタリング機能でタイトな旋回を叶えている。

ブレーキペダルは感触に優れ、回生から摩擦ブレーキへの推移も自然。ステアリングホイールの裏にパドルを追加し、回生ブレーキの効きを変えられれば一層面白いかも。人工サウンドは2種類から選べるが、排気音などを真似たものではない。

公道でのA290は素晴らしい。乗り心地は穏やかな側にあり、アバルト500eとアイオニック5 Nの中間といったところ。従来のメガーヌ R.S.ほどシリアスではなく、ゴルフ GTIへ迫るしなやかさがある。快適と表現できる。

ダンパーの減衰力は調整できないが、ドライブモードによってコーナリングは変化する。セーブ、ノーマル、スポーツ、パーソナルのどのモードでも、重心位置が低いため、基本的には機敏に身をこなす。

鋭い旋回と意欲的な加速 サーキットでも鮮烈

ステアリングは軽め。反応は正確で線形的。公道の速度域での情報量は薄いが、パワーオンでの手応えがあり、運転している感覚を強めてくれる。

旋回中はリア内側のブレーキを制御し、回頭をアシストするのと同時に、フロント内側のブレーキも効かせトラクションを向上。減速させることなく、意欲的な加速を可能としている。以前のフォード・フォーカス RSに備わった機能の、進化版といえるかも。

アルピーヌA290 GTS(欧州仕様)
アルピーヌA290 GTS(欧州仕様)

ルノー・メガーヌでは特殊なステアリング・ナックルを採用し、鋭いコーナリングを得ていた。A290にこの設計は施されていないが、一層のパワーアップが可能なら、実装されても良さそうだ。こんな話題へ電気自動車で触れられるなんて、非常にうれしい。

サーキットでは、A290は公道以上に鮮烈な印象を残した。電動だから、従来以上に驚きを感じたのかもしれないが。

A290は、これまでのルノーと同様に、アクセルペダルの加減でコーナリングラインを調整していける。グリップ力は素晴らしく、縁石に乗り上げても乱されることはない。

コーナー入口でブレーキを引きずると、リアタイヤを流せ、アクセルペダルの角度を変えると荷重が前後へ移動。侵入時にきっかけを与えれば、カウンターステアを当てながら突っ込める。

スタビリティコントロールは、ボタンで簡単にオフにできる。サーキットを本気で4周させたが、システムがセーブモードに切り替わることもなし。ブレーキもタレない。アルピーヌの技術者の、ホットな気持ちが伝わる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事