エンツォフェラーリへ通じる「DNA」 マセラティMC20 長期テスト(2) 車重を測ったら1710kg

公開 : 2024.11.23 09:45

エンツォフェラーリへ通じるDNA

その後、フラットなエリアで241km/hまで加速させた。筆者は、フェラーリ・エンツォフェラーリへ通じるDNAを感じている。同時期のマセラティMC12が、それと多くを共有していたことが影響しているかもしれない。

現在のミドシップのライバルと比べれば、パワートレインの構成はシンプル。スタイリングは端正な面構成で、優雅でありながら凛々しい。サウンドはイタリア車らしくエキゾチック。魅力的な部分で通じているように思う。

マセラティMC20(英国仕様)
マセラティMC20(英国仕様)

この2台の動力性能は、そこまで違ってもいない。2003年に、AUTOCARはエンツォフェラーリの加速性能を計測している。イタリア北部の、フィオラノ・サーキットで。恐らくその車両には、特別なガソリンが必要最低限だけ注がれていたはず。

最高出力660psで、車重1365kgが主張されたそのフェラーリは、0-100km/h加速を3.5秒で処理。0-161km/h加速は6.6秒。0-241km/h加速は13.1秒という結果だった。

対して、シリンダー数や排気量が半分のMC20は、0-100km/h加速3.1秒。エンツォフェラーリを、0-161km/hまでは上回った。0-241km/h加速は14.6秒で1.5秒遅れたが、車重の差を考えれば納得できる。

ハイグリップなミシュラン・タイヤを履いていれば、カタログ値の0-100km/h加速2.9秒も、達成できただろう。フェラーリ296 GTBは、0-241km/h加速を10.6秒でこなしてしまうが、これは電気の力を借りた別次元のモデルだ。

最近のHVスーパーカーの加速はリニアすぎる

筆者が素晴らしいと感じているのが、パワーデリバリー。時間が過ぎるほど、より強くそう感じている。最近のプラグイン・ハイブリッドのスーパーカーは、リニアに加速しすぎる。余りにも一糸乱れず、整い過ぎているように思う。

ネットゥーノ・ユニットも正確に反応するが、精緻なほどではない。フルスロットルを与えると、ブースト圧が高まり野性味が湧いてくる。タイヤの表面温度が高い状態では、激しくホイールスピンするほどではないけれど。

マセラティMC20と筆者、リチャード・レーン
マセラティMC20と筆者、リチャード・レーン

パワーバンドは、比較的高い回転域にある。ペダルのストロークは長め。これらの特徴が融合し、特有の味わいを生んでいる。マクラーレンのアプローチにも近いだろう。

296 GTBは圧倒されるほど速いが、一瞬にして恐怖を覚える領域へ迫る。しかし、MC20ならもう少し長く、興奮が高まっていくのを堪能できる。次はアウトバーンまで出かけて、濃密な加速体験に浸ってみたいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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