2025年モデルがラスト? 愛と青春のGT-R【新米編集長コラム#7】

公開 : 2024.11.10 12:15

これは気持ちよく走れるスポーツカー

2008年に初めて乗った時は恐ろしく速いと思ったが、今はそれほどには思えなかった。しかしこれはあくまで相対的な話で、570psと言われて驚かないのは、完全にこちらがマヒしているだけだ。ボディサイズも同様で、当時はかなり大きく感じたが、全長4710×全幅1895×全高1370mmは、現代のスーパースポーツカーとしては、それほど大きくない部類となった。

しばらく高速道路を普通に乗っていたら、左の太ももがじわじわと熱くなり、触るとセンターコンソール付近も熱いことに気が付いた。6速デュアルクラッチと4WDのパワートレインがあるのだから当然かもしれないが、え、イマドキ? とちょっと驚いた。インターフェイスも古さを感じさせ、車両価格だけみれば、それに見合ってない気もする。しかしデザインも含めて、基本的な部分は確かに古いが、それは決してネガではなく、むしろ『心地よい古さ』と書くことに抵抗は覚えない。

インターフェイスは古さを感じさせるが、その古さはむしろ心地よい。
インターフェイスは古さを感じさせるが、その古さはむしろ心地よい。    平井大介

翌日、撮影を兼ねて峠を目指した。するとワインディングでの身のこなしがよく、「これは気持ちよく走れるスポーツカーだなぁ」と印象がどんどんよくなっていく。

頂上付近で、インバウンドの方々がレンタルしてきたと思しき、インプレッサなど国産スポーツカーたちに出会った。そういう『頭文字D』的な世界においてGT-Rは天上車と言えるが、実はそうではなく、『GT』らしく、シレッとスマートに乗るほうがいいのではないかと思えてくる。

「あ、このクルマにはまった」

V6ツインターボの加速感。適度に重いステアリングと高いトレース能力。熟成された素晴らしい足まわり。4WDならではの安定感。合計300kmくらいを走行し体が馴染んできたら、GT-Rと一体になる、「あ、このクルマにはまった」と思う瞬間があった。そこから、思春期の頃から憧れてきた日産スポーツカーの頂点ともいえる、GT-Rへの愛おしさが止まらなくなり……。

約四半世紀、GT-Rは様々な時代を乗り越えてきたが、電動化の時代を迎え、いよいよこういったエンジン車のスポーツカーでは未来がないのかもしれない。でも、このボディサイズで、この作り方で、もう一度エンジンを搭載するスポーツカーを作ってほしいと、コクピットで左の太ももにじわじわと熱さを感じながら、そう願う自分がいる。

このボディサイズで、この作り方で、もう一度エンジンを搭載するスポーツカー作ってほしい。
このボディサイズで、この作り方で、もう一度エンジンを搭載するスポーツカー作ってほしい。    平井大介

そして思い浮かんだのが、『愛と青春のGT-R』というタイトルだ。ないものねだりとはわかっていても、もっと愛に満ちたGT-Rの青春感を浴びていたいと思った。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

新米編集長コラムの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事