【お勧めは4WD】インド生まれの侮れない日本車、スズキ・フロンクスに初乗り!

公開 : 2024.11.13 12:05  更新 : 2024.11.15 22:25

お勧めは4WD

ただし、低回転域では若干トルク不足を感じるときがある。前述のとおりどんどんシフトアップしてくのだが、2速から3速にシフトアップしたあたりで加速が鈍り、トルクが不足しているようなかったるさを感じた。

これを解消する方法はスポーツモードにすることだ。そうするとアクセルペダルの応答性が鋭くなるとともに、シフトアップポイントが1500から2000回転ほど高くなるために、こういったまどろっこしさを感じることはなくなり、直線的な加速を味わうことができるようになる。

2WDと4WDの違いは、やはりコーナリング性能にある。写真は4WD。
2WDと4WDの違いは、やはりコーナリング性能にある。写真は4WD。    内田俊一

だがしかし、今度は発進時に気を使うことに。ノーマルモードでは極めてスムーズに発進できるのだが、そのつもりでアクセルペダルを踏み込むとまるでスイッチのオンオフのような印象で、過敏な反応に戸惑ってしまった。現状ではノーマルモードで、トルク不足を感じた時だけパドルでシフトダウンするという乗り方が良さそうだ。

今回2WDと4WDを乗り比べることができた。結論からいうとお勧めは4WDだ。まずハンドリングはどちらも素直で、ステアリングフィールも自然。路面からのフィールもきちんと伝えてくれる。

2WDと4WDの違いは、やはりコーナリング性能。ただ、この差はワインディングではなく雨の街中で十分感じ取れる、いわば安全性能と捉えてもらっていい。例えば横断歩道などの白線でスリップした経験は誰にもあるだろう。そういったシーンでも4WDはしっかりと路面を捉え、行きたい方向にしっかりとクルマを進めてくれる。さらにレーンチェンジの時なども車両の安定感はかなり高かった。

慣らしが終われば大きく変わりそう

ところで、最後まで乗り心地について触れなかったのにはわけがある。それは試乗車がどちらも走行距離が500kmにも満たなく、まだ足まわりの慣らしが終わっていない状態で、少々突っ張るような固めの乗り心地だったからだ。

それでもスピードバンプのような大きな入力の際にはしっかりとしたストロークを感じたので、もう少し走り込めばはるかにしなやかさが感じられることだろう。現状でも2WDと4WDを比べると、明らかに4WDの方が後席も含めてしなやかさを感じられた。

2WDと4WDを比べると、明らかに4WDの方が後席も含めてしなやかさを感じられた。
2WDと4WDを比べると、明らかに4WDの方が後席も含めてしなやかさを感じられた。    内田俊一

開発責任者の森田氏は、ドイツの国民車の乗り味が好きとのことなので、最初は少し固めに組んで、そこから距離を重ねることで各部の慣らしが終わり、本来の乗り味が出てくるという、そう、まるでひと昔前の欧州車のようなクルマに仕上げているようなのだ。

そのほかADAS系は非常にスムーズで急激な加減速もない、安心して使えるものだった。加速時に若干ゆっくり過ぎるかなという場面もあったが、その場合はドライバーがアクセルペダルを踏み込めばいいだけのこと(あくまでも安全運転支援システムということをお忘れなく)。

シートも大きめだが、ホールド性は高く長距離もこなせそうな印象。前述のように走行距離が500kmに満たない走行距離だったが、一部情報によると1000kmほど走り込むとトルク不足もかなり変わってくるらしい。もしそうなら、普段使いから、クルマに対して一家言ある方にまでお勧めできる1台に仕上がっているといえる。何にせよ、全てにおいての自然さがこのフロンクスの美点だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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