ハイパフォーマンスの「ベンチマーク」 996型ポルシェ911 GT3(1) GT1用エンジンのヘッドを水冷化!

公開 : 2024.12.01 17:45

20世紀末に誕生した911の新ヒーロー、GT3 GT1用エンジンのヘッドを水冷化 アウトバーンで必要なウイング 聞き惚れるハードな響き 低い速度域で面白い 英編集部が記念すべき1台へ試乗

911 GT3の誕生25周年に当たる2024年

サプライズが苦手だったり、記念日を忘れがちなら、ポルシェ本社での仕事は向いていないかもしれない。ドイツ・シュツットガルトに拠点を置くスポーツカーメーカーは、節目節目での特別なモデルの考案を、欠くことはない。

2023年には、911の誕生60周年がお祝いされた。ブランドにとっても、75周年という記念すべき年だった。2024年は、911 ターボの生誕50周年に当たる。祝賀イベントに参加した、という読者もいらっしゃるかもしれない。

ポルシェ911 GT3(996型/1999〜2000年/欧州仕様)
ポルシェ911 GT3(996型/1999〜2000年/欧州仕様)

だが今年は、もう1つ、911ファンにとって重要な節目でもある。911 GT3の誕生25周年に当たるからだ。当時996型だった911に、GT3が初設定されたのは1999年。それ以来、ハイパフォーマンスのベンチマークであり続けている。

これをお祝いするため、ドイツ・シュツットガルトのポルシェ・ミュージアムは、英国編集部をオーストリアへ招待してくれた。アルプス山脈へ、初代GT3を持ち込んで。開発プロジェクトを牽引した、ローランド・クスマウル氏にもお会いすることが叶った。

クスマウルは、40年間もポルシェで才能を発揮し続けた、生粋のエンジニア。パリ・ダカールラリーへの挑戦に、ワンメイク・カップカーの技術開発、プロトタイプマシンの908/03から956のテストまで、彼の功績は枚挙にいとまがない。

同社のGT部門を率いる現任のアンドレアス・プロイニンガー氏は、彼の実質的な後継者。「自分が持つクルマに関する知識はすべて、911に関する殆どは、彼から学んだものです」。と認めるほど。

水冷の3.4L水平対向エンジンを搭載した996

クスマウルとともに911 GT3の開発をリードしたのは、マーケティング部門のハルトムット・クリステン氏と、モータースポーツ部門のハーバート・アンフェラー氏。企業文化的な側面で、かなり挑戦的なプロジェクトだったらしい。

1980年代から1990年代初頭にかけて、ポルシェ(正式名称: Dr Ing hc F ポルシェAG)は、クリエイティブ・ワークショップのような体制にあったという。限定生産の高性能仕様は、生産効率を殆ど考慮せずに生み出されていた。

ポルシェ911 GT3(996型/1999〜2000年/欧州仕様)
ポルシェ911 GT3(996型/1999〜2000年/欧州仕様)

実際、964型の911 RSや、993型の911 GT2は、手作りに近い状態だった。生産コストは信じられないほど高く、価格も上昇した。それが、今でも特別なオーラを放つ理由の1つといえるだろう。

しかし、それは収益性と相反するものといえた。ポルシェのCEOへ、ヴェンデリン・ヴィーデキング氏が就任したのは1993年。彼は、非効率との戦いに挑み始めた。

部品の互換性を高め、生産の合理化が図られた。コスト削減が新たな指針の1つになった。同時に環境負荷の低減が求められ、水冷エンジンへの変更が決定。その頃、モータースポーツでの活躍は優先事項の低い位置にあった。

1997年に登場した996型では、水冷の3.4L水平対向エンジンを搭載。DOHC化され、4バルブ構成になっていたものの、ドライサンプ方式での潤滑は想定されていなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

996型ポルシェ911 GT3の前後関係

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