ハイパフォーマンスの「ベンチマーク」 996型ポルシェ911 GT3(1) GT1用エンジンのヘッドを水冷化!

公開 : 2024.12.01 17:45

911 GT1用ユニットのヘッドを水冷化

FIA GT3レース用のホモロゲーション・モデル開発に当たり、アンフェラーは戦闘力を疑問視した。そこで996用ユニットのアップデートではなく、レーシングカーの911 GT1用エンジンへ手を加え、ヘッドを水冷化するというアイデアをひらめく。

公道用モデルとの結びつきを強化することで、ブランド力の向上が期待できた。GT1マシンのユニットは、空冷の993用ユニットとエンジンブロックやクランクシャフトの設計を共有。996型の911 ターボ用としても利用可能だと、彼は考えたようだ。

ポルシェ911 GT3(996型/1999〜2000年/欧州仕様)
ポルシェ911 GT3(996型/1999〜2000年/欧州仕様)

また当時のGT1はトップカテゴリーといえ、大幅な改良が認められていた一方で、相当な予算が求められた。さらに、エンジンブロックにドライサンプ・タンクを固定するなど、GT3用ユニットを生み出すには、相応の開発費も必要だった。

複数の量産モデルへ応用することで、コストの分散化が見込めた。最終的には、若干評判の良くなかった996のイメージ向上にも繋がった。

1999年に、AUTOCARは996型の911 GT3へ初試乗。ステアリングホイールを握ったクリス・ハリス氏は、「最新の911が、快適性を求めて魂を売ったという批判があります。このGT3は、それに対するポルシェからの回答でしょう」。とまとめている。

アウトバーンで必要な優雅にうねるウイング

今回お借りしたのは、完璧な状態にあるガーズ・レッドの1台。ポルシェ・ミュージアムの所蔵車両だ。アルプスの鬱蒼とした山肌と、見事な補色関係を織りなす。

991や992型の911 GT3と比較すれば、容姿はだいぶ保守的。996型では、通常の911 カレラにもGT3と同じデザインのホイールとボディキットが提供されており、特別感は強くない。それでも、最新の技術が投入されたという孤高の雰囲気を漂わせる。

ポルシェ911 GT3の開発に携わった、技術者のローランド・クスマウル氏
ポルシェ911 GT3の開発に携わった、技術者のローランド・クスマウル氏

10スポークの2ピース・アルミホイールが、タイトにフェンダーへ収まる。フロントスプリッターは、歩道への乗り上げを躊躇するほど低い。モータースポーツ部門によってセットアップされた、凛々しさがある。

優雅にうねるリアウイングは、ボディと同色。最新のスワンネック・デザインほどシリアスではないが、クスマウルによる上層部への説得がなければ、量産には至らなかった。

「CEOは、ウイングが好きではありませんでした。醜いと感じたようです。ポルシェの顔とはいえません。付ける必要はあるのでしょうか。と反論されました」

「自分は、アウトバーンには必要だと主張しました。300km/hで車線変更するには、安定性と安全性のために、ダウンフォースは不可欠だと」。グレーのポロシャツを着た、クスマウルが目を細めながら振り返る。

空力的なバランスを整える、ガーニーフラップも実現させた。「これは、カレラ用のボディキットには設定がありません」

この続きは、996型ポルシェ911 GT3(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

996型ポルシェ911 GT3の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事