マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 改良されたエンジンとシャシー 冷静からやや情熱的に

公開 : 2024.11.16 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

ディテール好きなら、アルトゥーラはもちろん、マクラーレンの技術解説は楽しく読めるはずだ。

改良型の20psアップは、3.0LのM630型V6の電子制御に手を加えたことによるもの。さらに、明らかに高い8500rpmのレッドラインに向かう活力も上積みされている。このホットVユニットそのものに、それ以外の変更は加えられていない。

シースルーのバットレスは、マクラーレンのスパイダーに見られる特徴的な要素。肩越しの視界を改善する狙いを、遺憾なく果たしてくれる。この点で、これより優れたスーパーカーはない。
シースルーのバットレスは、マクラーレンのスパイダーに見られる特徴的な要素。肩越しの視界を改善する狙いを、遺憾なく果たしてくれる。この点で、これより優れたスーパーカーはない。    MAX EDLESTON

それは、8速DCTのベルハウジング内に組み込まれた95psのアキシャルフラックスモーターも同様だ。モーターそのものは、ハイパーカーのP1に用いたものより出力密度が3割増。プラグインハイブリッドシステムは、7.4kWhで88kgのバッテリーと、130kgのドーナッツ型モーターが含まれる。

ルーフの開閉メカニズムは62kgで、テスト車の実測重量は1618kg。これは2019年に計測したV8搭載の600LTより153kg重いが、ハイブリッドを積まないマセラティMC20シエロより165kg、固定ルーフのフェラーリ296GTBより30kg軽い。

ほかの変更点は、パワートレインのマウントが硬くなり、新たなダンパーのバルブは敏捷性とレスポンスの向上に寄与するという。さらに、強化されたブレーキキャリパーと、新たなブレーキ冷却ダクトが備わり、ABSも再チューンされた。

トランスミッションにも手が入り、油圧を前もってシフト時に必要なところまで加圧することで、変速タイムを25%短縮。排気系は、標準仕様にもスポーツエキゾーストにもアクティブシステムが備わり、より豊かなサウンドを生む。

ホイールはテスト車に装備された10スポークのスーパーライトウェイトと、新デザインの15スポークが選択可能。オプションで用意されるチタンボルトは、バネ下重量を400g程度削減する。

スーパーフォーム成型のアルミパネルを用いるボディに変更はなく、クレバーなエアロも比較的控えめなままだ。スパイダーでは根元部分がシースルーとなるバットレスにはエアインテークが設られ、エンジンルームに走行風を取り込んで排熱する。

リアデッキのウサギ穴のようなダクトは、600LTの上方排気口のような見た目だが冷却用の開口で、マクラーレンのエンジニアはチムニー、すなわち煙突と呼んでいる。さらに、デッキには後方向きの通風口もあり、リアエンドはメッシュ張りとなっている。

スパイダーは、ヘッダーレールに小さな隆起を設置。これは、オープン時にキャビンのノイズを低減する機能がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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