マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 改良されたエンジンとシャシー 冷静からやや情熱的に

公開 : 2024.11.16 20:25

走り ★★★★★★★★★☆

さまざまな改良で、パワーは2%アップしたが、スパイダーはクーペより重く、テスト日の気温は低かった。それでも、このオープンモデルが固定ルーフモデルより速かったのは驚きだ。0-97km/h加速は3.1秒、0-241km/h加速は12.8秒で、クーペの3.2秒/13.2秒を凌ぐのだ。

フェラーリ296ほどとんでもなくはないにしろ、これはきわめて速いというのに十分なクルマだ。そしておそらく、少しばかり容易に楽しめる。というのは、フルスロットルにしても、いきなり額と手のひらに汗が噴き出すような張り詰めた領域に叩き込まれるわけではないからだ。マクラーレンのハイブリッドの調整が、それに寄与している。

ハイブリッドの力強さと反応のよさは、自然吸気V12を思わせる。モーターのみでの走行距離は公称34kmで、エンジン音のないスーパーカーの走りは斬新な体験をもたらす。
ハイブリッドの力強さと反応のよさは、自然吸気V12を思わせる。モーターのみでの走行距離は公称34kmで、エンジン音のないスーパーカーの走りは斬新な体験をもたらす。    MAX EDLESTON

追い越し加速では、力強いアキシャルフラックスモーターがやりすぎなくらいにクルマを前へと押し出してくれる。しかし不自然さを感じるような強さではないのだ。もしもターボユニットらしいエンジン音が聞こえなければ、5.0L級のV12を積んでいると言われても信じそうだ。それは、低回転域でのスロットル操作に対する素早い反応にも言える。

同時に、エンジンは負荷がかかると以前よりブーストが効いた感じがする。リアウインドウを開けると、このエンジンの独特な気流や音がコクピットに入ってくるが、それによる感覚的なものではない。このV6は、5000rpm以上でより激しく回り、6気筒によくみられるかすかな金属音もあって、緊迫感や冷たく強固な感じが強まっている。

ブレーキに関してマクラーレンは、踏みはじめがソフトなペダルを好む。これは左足ブレーキやサーキット走行に向いている。初期のセンシティブさは少ないほうが、踏み込んでいっての調整がしやすいためだ。

ところが、アルトゥーラは少し違う。ペダルの初期レスポンスはすばらしくはっきりしていてかなり早めだが、イタリア車のような過敏さはない。97−0km/hのタイムは2.29秒で、今年テストした750Sよりいいのだが、フェラーリ296には及ばない。あちらがミシュランのカップ2R、こちらが比較すれば普通寄りのピレリPゼロ・コルサを履いているのだから、この結果は予想できる。

それでも、113−0km/hの制動距離が39.2mというのは悪くない。また、ハードブレーキを6回繰り返しても、フェードの兆しさえなかった。失望させられるようなことはないだろう。

アルトゥーラはPHEVで、走行モードはコンフォート/スポーツ/トラックのほかにEVがある。メーターカウルの縁にあるロッカー式セレクターで選択すると、電力のみで34kmほど走るという触れ込みで、モーターだけでも運転はしやすい。

EVモードで屋根を開けて走ると、タイヤの息遣いのような音までが耳に入り、目新しくて楽しい走りが味わえるが、コンセプトカーを走らせているような奇妙な感じでもある。石が床下に打ち付けられる音や、サスペンションのリンクが発する金属音も逃さず聞こえる。

V6に火が入るとさらにおもしろくなる。トラックモードに入れて激しい風の音を感じながら、指先でDCTを変速して走るのはじつに気持ちいい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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