マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 改良されたエンジンとシャシー 冷静からやや情熱的に

公開 : 2024.11.16 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

アルトゥーラに乗った感じは、まさしくいまどきのスーパーカーのそれだ。車体の前のほうに座り、マクラーレンらしく低いスカットル越しには、短いボンネットの隆起を見下ろすようだ。

身体を支えるのは、背もたれが固定されたシートで、前後スライドはしないが、ヒップポイントが電動でチルトする。脚を伸ばすと、ちょうど足を置く位置にペダルがある。豪華な装備というより、本気のスポーツアイテムといった感じのシートだ。

スパイダーは、クーペよりレッグルームが多少目減りしているが、ヘッドルームに変化はない。
スパイダーは、クーペよりレッグルームが多少目減りしているが、ヘッドルームに変化はない。    MAX EDLESTON

このアルトゥーラ・スパイダーはもちろんだが、アップデートされたクーペも、2022年にテストした改良前のモデルよりやや張り詰めたものになっていると気づくのに、さほど時間はかからない。その違いは、改良された細身のダンパーが、もともと小さかったロールや上下動をさらに切り詰めていることにある。

実際、手を伸ばしてシャシーをスポーツモードに設定するのは、今までより気をつけるべきだ。われわれは、パワートレインはハードな設定を選ぶことが多かったが、サスペンションはコンフォートのままにしがちだった。それでも、公道上では必要とされるコントロールをすべてもたらし、それでいてボディは、グリップ限界を超えていないことを伝えてくる。

コンフォートモードでもシャシーは引き締まっていて、コーナリング中にスロットルを抜くと、いい感じのタックインをしてくれる。その点、マクラーレンはいつも、ナチュラルでうれしくさせてくれる。

グリップは、少なくともドライなら、驚くほど豊かだ。そのデリバリーはリニアで、思いがけずトラクションコントロールが盛大に介入するようなことはない。フェラーリ296では、必ずしもそういうわけにはいかない。それによって、毅然としたフィールで信頼できるクルマになっている。

頭上では強い風が吹き荒ぶが、シャシーは乱れることなく、従順で安心感があり、路面をしっかり捉えている感覚はこのクラスで最高だ。それは前後ともに言えることで、まるで一体となっているかのように動く。

新しく硬さを増したセットアップが、以前よりクルマを軽く感じさせることができていないのは残念だ。スロットルオンでのアジャスト性も向上していない。ステアリングは完璧なギア比設定で手応えもいいのだが、コーナーへ楽に勢いよく飛び込めるかというと、フェラーリほどではない。

ここまでよくできたスーパーカーとしては、ハンドリングバランスがややコンサバティブすぎるのも気になる。コーナー進入の際に、一瞬だけ押されるのは改良後も変わらない。さらにチューンされ、問題を解消したLTが出るのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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