素晴らしきラテン系! マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(1) トリオで「最後の晩餐」

公開 : 2024.11.30 09:45

E39型時代のM5に似ている操縦性

いずれも、動力源は比較的小さなターボエンジン。しなやかなサスペンションが支える、後輪駆動のシャシーに載っている。予測の難しい実環境で、最高のパフォーマンスを発揮できるよう開発されている。

目的はただ1つ。理解あるドライバーへ感動を与えること。ラップタイムやトップスピードではない。

レッドのアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオと、イエローのマセラティMC20
レッドのアルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオと、イエローのマセラティMC20

フェラーリのV8エンジンから派生した、2.9L V6ツインターボをフロントに積む、ジュリア・クアドリフォリオはこの中で先輩。最高速度307km/hの能力を秘めたスーパーサルーンだが、数世代前のBMW M5のような軽やかさで公道を駆け抜ける。

2016年に初試乗した時、BMW MモデルやメルセデスAMGと明らかに異なることへ、筆者は感銘を受けた。2024年では動力性能の驚きは減り、アップデートでダンパーも引き締まったが、根底の特長は変わらない。

運転体験は、E39型時代のM5に似ている。ちょっとしたきっかけで、テールスライドを始めたがる。しかし、過度に恐れる必要はない。

最高出力は520psあり、グリップ力を破ることは難しくない。挙動は若干尖っていることは否めない。しかしアルファ・ロメオは、驚くほどストロークするサスペンションと、11.8:1のクイックなステアリングレシオを与え、バランスを取っている。

一見すると、不安定さを招きそうに思える。だが公道で目一杯あおっても、ワインを飲みすぎたイタリア人のようにはならない。ボディは傾き、テールは流れるものの、慣れれば素晴らしい伴侶だと理解できる。

A110の他では得難い繊細さと軽快感

アルピーヌがA110の提供を始めたのは、2017年。このクラスには、絶対王者的なポルシェが存在する。秀抜なステアリングの感触に、着座位置の低さや人間工学、パワートレインとグリップ力、理想に近い重量配分など、ボクスターの強みは多い。

しかしA110には、他では得難い繊細さと軽快感が備わる。車重は約110kg軽く、タイヤは比べれば細い。前後ダブルウイッシュボーン式という、サスペンションの構成も望ましい。その操縦性は、極めて特有なものだ。

アルピーヌA110(英国仕様)
アルピーヌA110(英国仕様)

かなり大胆なモデルともいえる。アルミニウム製シャシーのミドシップだが、英国価格はフォルクスワーゲン・ゴルフ Rと同程度。1798ccターボエンジンの最高出力は、当時でも控えめだった251psでしかない。

ステアリングレシオは、どちらかといえばスロー。サスペンションは、ドライバーが荷重移動を楽しめるようソフトに調整されている。相当にリスキーな選択へ思えるが、その仕上がりは素晴らしい。

A110のようなスポーツカーを作ろうと考える、大手のメーカーは極めて稀有。2代目はバッテリーEVになるはずだが、どう進化するのか関心は尽きない。

この続きは、マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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