マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(2) 似通った個性が「共存する偶然」

公開 : 2024.11.30 09:46

独自路線を選んだラテン系の3台で最後の晩餐 E39型M5に似ているジュリアの操縦性 A110の他では得難い繊細さと軽快感 秘めた魅力へ気付きにくいMC20 英編集部が改めて試乗

秘めた魅力へ気付きにくいMC20

マセラティMC20は、アルピーヌA110と同じくらい独自性が強い。同社が選択したのは、カーボンファイバー製のタブ構造。フェラーリは、まだ主力モデルへ採用していない、高度な技術といえる。

フォルゴーレと呼ばれる、バッテリーEV仕様も控えている。最高出力は1200ps前後になるらしい。それでも、3.0L V6ツインターボ、ネットウーノ・ユニット仕様も当面生産が続く。もしマセラティが許可するなら、ぜひ直接乗り比べてみたいところだ。

イエローのマセラティMC20と、レッドのアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ
イエローのマセラティMC20と、レッドのアルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオ

提供価格はフェラーリ296 GTBより高く、スペック上の性能では届かない。販売数でも大きく水を開けられている。発進した瞬間の驚きは小さく、短時間試乗しただけでは、秘めた魅力へ気付きにくいかもしれない。

ブレーキペダルの感触は、見た目へ反するようにソフト。ステアリングホイールは大きめで、ダイレクト感はやや乏しい。バイワイヤ方式へ改められたアクセルペダルの反応も、若干の緩さを伴う。

サスペンションは、このクラスとしては間違いなく柔らかい。速度抑止用のスピードバンプを超えると、1度大きくリアが沈むほど。いずれもスーパーカーの体験として、多くの人が期待するものではないだろう。

アルファ・ロメオが作った大きなA110?

A110やアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオに通じる、ボディが滑らかに動く不思議な感覚は、630psのスーパーカーには不釣り合いかもしれない。軽めに調整された操縦系も。ある程度、ドライバー側の順応が求められる。

発進前に、MC20を適切に設定する必要もある。パワートレインの反応を鋭くする、スポーツ・モードを選びつつ、ダンパーはソフトに戻す。こうすることで、マセラティは魅惑的な体験を提供し始める。

イエローのマセラティMC20と、レッドのアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ
イエローのマセラティMC20と、レッドのアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ

アスファルトの不整はなだめられ、カーブの途中にある隆起部分を恐れる必要も消える。ステアリングの反応は至って自然。リアアクスルは安定し、仮にタイヤが軽く空転しても、落ち着きが乱れることはない。

本気を出せば、MC20は古いランボルギーニのような勇ましさを展開するのと同時に、繊細さも失わない。ボディは前後にピッチし、左右へロールする。あえて、フラットさには拘られていない。

アルファ・ロメオが、大きなA110を作ったようにも思えてくる。実際、MC20はアルファ・ロメオ8Cの後継モデルが想定されていた、という話も存在する。マセラティの上層部は、これを強く否定するが。

フィアットクライスラーのCEOだった故セルジオ・マルキオンネ氏は、ミドシップの8Cというアイデアを温めていた。ところが2018年に急逝し、立ち消えとなっている。いずれにしても、最終的にマセラティとして誕生したことへ感謝したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110の前後関係

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