崖っぷちの英国自動車業界に「希望」がある理由 日本も無関係ではなかった

公開 : 2024.11.15 18:05

英国の自動車産業はジェットコースターのような浮き沈みに直面しているが、地平線上には大きなチャンスがある。どのように衰退し、そして今後どう発展していくのか。AUTOCAR英国編集長が読み解く。

浮き沈みの激しい英国自動車産業

自動車業界に詳しいと自負する人たちの間でも、英国は自動車を作るのがあまり得意ではないという思いが蔓延している。ドイツやフランス、イタリアとさえ違うのだと。

戦後数年間は世界最大の自動車輸出国としてスタートし、米国にも勝っていたが、その後の70年間で優位性は失われてしまった。

ミニのオックスフォード工場は年間約20万台を生産しており、その80%は輸出向けだ。
ミニのオックスフォード工場は年間約20万台を生産しており、その80%は輸出向けだ。

確かにハードルはあった。特に、第2次世界大戦後のドイツ自動車産業の再建を支援し、自国よりも大きな市場につなげるために最善を尽くして以来、競争ははるかに激しくなっている。

フランスもまた、自国製品を好む国民性に後押しされ、急速に復興を遂げた。

その後、外国からの輸入が本格化した。1950年代と60年代には米国が、そして60年代と70年代には日本がやってきた。

我々は、オースチン、モーリス、ローバー(さらにウーズレーやライレーも数台)を生産して自らの首を絞めた。技術的には魅力的だったが、製造品質はひどく、輸出力もほとんどなかった。

1990年代から2000年代にかけては韓国(英国にインスパイアされた産業)がやってきた。そして今、中国が以前よりも明らかに魅力的な、先進的な電動モデルを携えて目の前に迫ってきている。

日本メーカーの貢献と輸出の低迷

それでも、1980年代にはトヨタホンダ日産といった日本企業が製造業者として英国にやってきたことは、我々が彼らの輸入モデルを制限しようと努力した賜物だ。

彼らは英国の安定性、共通語、歓迎的な政府、繁栄するフリート(社用車)市場を気に入り、英国での自動車製造業は健全さを保った。

70年代から80年代に生産されていたオースチン・アレグロ。
70年代から80年代に生産されていたオースチン・アレグロ。

啓蒙的な外国の経営陣と労使関係(1979年のホンダとローバーの提携が特に重要だった)の影響を受け、英国の自動車製造業が抱えていた一見修復不可能な労働組合の問題は解消された。

日産のサンダーランド工場は同社の世界的な宝石の1つとなり、それは現在も変わらない。トヨタのダービーシャー工場とホンダのスウィンドン工場も繁栄した。

2016年末、国内の自動車生産台数172万台という17年ぶりの大記録を達成し、英国自動車製造販売者協会(SMMT)の会長とCEOが、200万台という大台も間もなく達成されるだろうと示唆する衝撃的な出来事もあった。

これは、ブリティッシュ・レイランド全盛期の1972年に達成された192万台を上回るものである。当時はまだ英国の消費者がアレグロ、マキシ、マリーナを大量に購入していたため、輸出市場の低迷にはほとんど気づかなかった。

200万台の記録は達成されなかった。その年の初め、英国国民の過半数が僅差でEU離脱に投票し、その決定(3年半後に正式決定)が自動車販売に影響を及ぼし始めた。

当初はわずかな兆候だったが、徐々に加速していった。2017年の自動車生産台数は3%減の167万台となったが、2020年にブレグジットが正式決定するまでに(この年はコヴィッドによる最初のロックダウンという悲惨な事態も発生した)、92万1000台にまで落ち込んだ。部品不足と自動車需要の乏しさが響いて、2022年には77万5000台と、6年前の記録の45%にとどまった。

2022年2月のウクライナ侵攻によって状況は複雑化した。ワイヤーハーネスの重要な供給源となる工場が、ウクライナ国内に17あるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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