崖っぷちの英国自動車業界に「希望」がある理由 日本も無関係ではなかった

公開 : 2024.11.15 18:05

豊富な「資産」を活かせるか

その他にも、現在英国には、EVの組み立て技術の導入準備が整った、よく訓練された意欲的なスペシャリストたちがいる。また、国内に22以上の自動車研究開発センターがあり、その多くはMIRAやミルブルックのようなテクノロジー・ハブにあるが、そのうちの5つは国内の大学と提携している。

英国を訪れたり、英国で働いたりする技術者たちは、産業界と一流大学との密接な関係についてよく言及する。過去にはリチウムイオンバッテリー技術を開発し、最近ではメルセデス・ベンツに買収されるほど将来の電動化にとって重要な、電気モーターメーカーのヤサ(Yasa)もこうした関係性の中で育った。

英国は今後、AIと自動運転においてさらなる発展が期待される。
英国は今後、AIと自動運転においてさらなる発展が期待される。

クラウチャー氏は、英国の自動車産業の今後の発展において、才能ある人材の幅広いスキルがこれまで以上に重要になると確信している。

「自動車業界では、やりたいことは何でもできる」と同氏は言う。「グラフィックデザイナー、ソフトウェア、ハードウェアエンジニア、空力研究、そして良いシートやインテリアを作りたい人など、活躍の場はある。誰にでも居場所がある」

一方、専門家によると、英国は基礎的な研究開発においては優れているが、重要な開発を「デスバレー(死の谷)」を越えて成功に導くことに関しては、歴史的にはるかに不得手であるという。

少なくとも、この欠点は現在ではよく認識されている。政府出資の先進推進センターなどの機関は、中小企業が貴重な技術の所有権を手放すことなく、危険な航海を乗り切れるよう支援するという素晴らしい実績を積み上げてきた。

すべてがバラ色というわけではない。自動車メーカーは、英国のエネルギーコストは欧州諸国の平均より60%から65%も高いと見積もっており、それは一部の人にとっては耐え難い重荷である。

労働党新政権が再生可能エネルギー・プロジェクトに集中し、より賢明な税制と、ガスと電気料金の古くからの(そしてますます不適切になっている)つながりを切り離し、この不利な状況を軽減してくれることを願っている。

そして未来は? SMMTの技術革新部門責任者であるデビッド・ウォン氏は、人工知能と自動運転技術の分野で英国が特に成功すると予測している。現在の電動化ブームが収束した後の重要な発展分野だという。

Wayve、Oxa、Aurrigoのような企業は、すでに製品と技術の面で十分に進んでおり、世界をリードする企業になる可能性があると同氏は言う。少なくとも、英国は再び自動車の世界をリードすることができるのだ。これは決してハッタリではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事