自称「世界最強のバス」へ試乗 プラエトリアンとテラストーム イタリアの洪水でも活躍

公開 : 2024.11.28 19:05

ウクライナのトーサス社が開発した、世界最強と主張されるバス きっかけはロシアによる侵攻 想像以上に運転は簡単 イタリアには救急車も 目的は過酷な環境での安全な移動 英編集部が試乗

世界最強と主張されるバス 最大トルク115.9kg-m

殆どの読者は、大型バスでの旅行を楽しまれた経験をお持ちなはず。目的地まで、景色を眺めながら快適に移動できる場合もあるし、隣の席へ座った人の香水や体臭に我慢を強いられる時もある。

アジアの奥地を目指したり、砂漠を貫く観光バスに乗ったことがある、という方もいらっしゃるはず。自分で運転した方が気楽かもしれないが、流石に普通は火山の噴火口へ近づくことは難しい。

トーサス・プラエトリアン(欧州仕様)
トーサス・プラエトリアン(欧州仕様)

しかし、ウクライナのとあるメーカーは、世界最強だと主張するバスを開発した。ロシアとの戦いが続く同国だが、望まないような終末の世界にも対応できるかもしれない、プラエトリアンとテラストームという2台だ。

トーサス社は、ウクライナに住むヴァフタング・ジュカシビリ氏が2014年に創業したメーカー。同社初となる量産モデル、プラエトリアンの開発は2017年にスタートした。

マン社製の6.9L 6気筒ディーゼルターボエンジンに、12速ATが組み合わされ、最高出力は294ps。最大トルクは115.9kg-mを誇る。四輪駆動で、渡河水深は最大680mm。傾斜65%という、一見すると絶壁のような斜面も登ることができる。

サスペンションは前後ともエアスプリング。大きな岩や深い水たまりがあっても、可能な限り滑らかな乗り心地を実現するとのこと。バスだから、定員は35名と多い。

きっかけはウクライナ侵攻 乗り心地は良好

ジュカシビリがこんなバスを開発しようと考えたきっかけは、2014年に始まったロシアによるウクライナ侵攻。クリミア半島が武力で併合されたことは、記憶に新しい。

混乱から逃れるため、市民は避難を余儀なくされた。しかし、見通しの良い道路は戦闘場所に。アスファルトは破壊され、通常のバスでは走行が難しい状態へ追い込まれた。

トーサス・プラエトリアン(欧州仕様)
トーサス・プラエトリアン(欧州仕様)

「オフロードへ対応するバスがあれば、避難するチャンスを与えられるというアイデアが発端です。そこで、援助プログラムに関する情報を集めました。鉱山などの環境や、ウクライナ軍のことも」。ジュカシビリが説明する。

陸軍での利用を想定した、装甲バスではないことを彼は付け加える。だが、要望があれば提供は可能だという。

今回試乗したプラエトリアンは目立つよう、明るいイエローに塗装されていた。幅が広く背が高く、ボディカラーと相まって、相当な存在感がある。ブロックパターンのタイヤは極めて巨大だ。

乗り心地は、主張通り良好。車内は広々としており、次の目的地まで道が整備されていなくても、比較的快適に旅行を続けられそうに思える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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