自称「世界最強のバス」へ試乗 プラエトリアンとテラストーム イタリアの洪水でも活躍
公開 : 2024.11.28 19:05
ベースはVWクラフター イタリアには救急車も
運転席へ座らせてもらう。オフローダー・ファンなら喜ぶであろう、無骨なスイッチが並んでいる。発進させてみると、想像以上に簡単で驚いた。
12速ATはパドルで変速できる。シートは、フロア側と独立するようにダンパーで支えられ、鋭い隆起部分を越えても飛び上がるようなことはない。肉厚なタイヤが、細かな不整はないものにする。
過酷な条件でも、順調に先を急げる。適切なギアへ落とせば、急勾配もグングン登る。大きな水たまりなど、取るに足らない。
ただし、プラエトリアンは大型バスだから、対応した運転免許が必要になる。ボディは巨大で、すべての条件へ対応するモデルとはいえなかった。そこで2番目に、テラストームが開発された。
フォルクスワーゲンの商用車、クラフターをベースにした、オフロードバス/トラックだ。2.0L 4気筒ディーゼルターボエンジンの最高出力は176ps、最大トルク41.6kg-mと、力強さではプラエトリアンに及ばないが、走破性では負けていない。
2024年の夏、イタリア北部のボローニャ周辺で洪水が発生。冠水した市街地を果敢に走る救急車があった。それがテラストームだ。定員は20名まで対応。鉱山で働くスタッフを送迎するのにも適している。現地調査へ向かう、移動実験室にもなるだろう。
最も過酷な環境でも人が安全に移動できること
トーサス社の強みといえるのが、柔軟な適応力。テラストームのリア側を、要望に応じて改造することもできる。「わたしたちは若い会社で、規模も小さいですから。そのため、自由度が高く速く動けます」。ジュカシビリが落ち着いた表情で口にする。
「最初の車両開発では、コンセプトスタディを進めながら、市場に出向いて要望を聞いて回りました。マーケティングとエンジニアリングは、直結しているんですよ」
テラストームも運転はしやすい。トルクが太く、急斜面でも苦しそうな素振りはない。アマチュアのドライバーでも、厳しい移動任務を果たせるかもしれない。
世界で最も過酷な環境でも、人間が安全に移動でき、作業を可能にすること。これが、トーサス社の目指すところだという。災害救助へ参加したり、戦闘から逃れるだけではない。特別な休暇のために、前人未到の場所を目指すこともできるだろう。
ちなみにライバルモデルとしては、 シャープ N1200という巨大タイヤのオフローダーがある。-40度から45度まで対応し、水に浮くこともできる。あるいは、メルセデス・ベンツのウニモグは、広く知られた選択肢といえる。
取材からの帰り道。グレートブリテン島の傷んだアスファルトが、普段以上に好条件に思えた。
執筆:アレックス・ゴイ(Alex Goy)
撮影:ルダコフ・ローマン(Rudakov Roman)
プラエトリアンとテラストーム 2台のスペック
トーサス・プラエトリアン(欧州仕様)
欧州価格:22万3510ユーロ(約3688万円)
最高速度:99km/h
車両重量:10.4t
パワートレイン:直列6気筒6871cc ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:294ps
最大トルク:115.9kg-m以上
ギアボックス:12速オートマティック(四輪駆動)
トーサス・テラストーム(欧州仕様)
欧州価格:7万6580ユーロ(約1264万円)
最高速度:161km/h
車両重量:3.5-3.8t
パワートレイン:直列4気筒1968cc ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:176ps
最大トルク:41.6kg-m
ギアボックス:6速オートマティック(四輪駆動)