【ハイテク機能を搭載した帰国子女】ホンダCR-V e:FCEV試乗記
公開 : 2024.11.17 07:05
6代目にフルモデルチェンジし、『使い勝手のいいSUV』の枠を超えたホンダCR-V e:FCEVに篠原政明が試乗。ホンダが1990年代後半から取り組んできたFCEVの進化と共に解説します。
6世代目のCR-Vは米国ホンダPMCで製造
ホンダのミドルサイズSUV、CR-Vが6代目にフルモデルチェンジされて日本に帰ってきた。「帰ってきた」と表したのは、今回の新型CR-Vは米国オハイオ州メアリズビルにある、ホンダの四輪車生産拠点であるPMC(パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター)で製造される、いわば『帰国子女』だから。しかも、単なるSUVではなく『e:FCEV(イーエフシーイーブイと読む)』と呼ばれるパワートレインを採用してきた。
e:FCEVとは、簡単にいってしまえばプラグイン機構を備えたFCEV(燃料電池車電気自動車)だ。ホンダは1990年代後半からFCEVの研究開発を進め、1998年に最初のプロトタイプを発表。以後、2008年には世界初の量産FC(燃料電池)専用設計車『FCXクラリティ』、2016年には進化した『クラリティ・フューエルセル』を発売。今回のCR-V e:FCEVでは、GMと共同開発した第5世代のFCを搭載している。
FCEVとは、燃料の水素を大気中の酸素と化学反応させて電気を発生し、その電力でモーターを駆動して走るEV(電気自動車)だ。e:FCEVでは、それに17.7kWhの駆動用バッテリーを組み合わせ、自宅や商業施設などで充電が可能なプラグイン機構を備えている。ただし充電は普通充電のみとなる。
つまり、使い勝手のいいSUVで、自宅や都会の商業施設ではプラグインを活用して充電してバッテリーに電気を蓄え、遠出のときは充電より時間の短い3分チャージで水素を充填し、ロングドライブや外部給電を利用してのアクティビティも楽しめる。そんな、FCEVとPHEVのイイトコ取りといったクルマが、このCR-V e:FCEVなのだ。
バッテリーの電力だけで約61km、水素だけでも約621km可能というから、うまく使い分ければ市街地ユースから長距離ツーリングまで、残りの燃料を気にしないで楽しむことができるだろう。
今までのクルマから乗り換えても違和感はない
CR-V e:FCEVの実車は以前の事前説明会で見ていたが、公道上で見るのは初めて。日本では2022年で販売を終了した先代とスタイリング的には似ているが、薄型のヘッドランプでワイド感を強調するフロントまわりや、CR-V伝統の縦型リアコンビランプを踏襲しながらクリアレンズやブラックガーニッシュで引き締めたリアビューなど、SUVらしい力強さを増幅させた。
北米仕様のCR-V PHEVをベースに、フロントグリルやフェンダー、エンジンフード、前後バンパーなどが専用デザインに変更され、全長はフロントのオーバーハングが110mm延長されている。したがって先代より全長は200mmほど長くなったが、全幅や全高は変わらない。SUVとはいえ、日本の街中でも使う機会が多いなら、これくらいのサイズまでが扱いやすいだろう。
インテリアがブラック一色なのは少しビジネスライクで味気ないが、合皮ステアリングホイールやバイオ合皮のシートなどサステナブルな素材を採用し、人にも地球にも優しいクルマを主張している。それでもコクピットまわりのデザインやインターフェイスは最新のホンダ車と共通している部分が多いので、視認性も良く、また操作性も違和感はない。
つまり、普通のエンジン車やハイブリッド車から乗り換えても「これを作動(もしくは調整)するには、どのスイッチをどう操作したら良いのか?」と悩むことはほとんどないだろう。この手の『新世代』的なクルマは、それだけで拒否反応を起こす人もいるから、これは重要なポイントだ。
では、シートベルトを締めて、システムを立ち上げ、スイッチ式ATセレクターをDに入れて走り出そう。