【ハイテク機能を搭載した帰国子女】ホンダCR-V e:FCEV試乗記

公開 : 2024.11.17 07:05

走りの質も乗り味も高レベル。使い勝手も悪くない

走り出してしまうと、その印象は今までのEVと大きくは変わらない。アクセルペダルを緩やかに踏み込んでいくと、静かにシームレスに加速していく。さすがに車両重量が2トンを超えるので、発進時にアクセルペダルをベタ踏みしてもハイパワーEVのようなロケット加速はしないが、それでも十分以上の加速を見せる。

その重めの車両重量や低い重心高も奏功してか、乗り味はしっかりしていて安定した走りっぷりを示す。市街地でも高速道路でも、走行中はタイヤが発するロードノイズ以外はほとんど聞こえず、室内はきわめて静かだ。

ラゲッジスペースは十分な広さ。外部給電を利用してアウトドア・アクティビティも楽しめる。
ラゲッジスペースは十分な広さ。外部給電を利用してアウトドア・アクティビティも楽しめる。    田中秀宣

ハンドリングを試すようなシチュエーションはなかったが、それでもボディ剛性の高さや、少し荒れた路面では追従性の良さを感じさせてくれた。ベースとなっているCR-Vの出来の良さを、このe:FCEVだけでなくPHEVやエンジン車でも試してみたくなるほどだ。

走行状況に応じて、オート/セーブ(バッテリー残量を維持)/チャージ(FCからバッテリーを充電)/EV(バッテリー電力を優先)とドライブモードを切り換えられるが、試乗時はバッテリー残量がほとんどなく、切り換えても走りの印象は大きくは変わらなかった。

停車中に、FCスタックが作動している「シューン」といった音を発することがあるが、これも車外では聞こえるが車内ではほとんど気にならない。

室内の広さはPHEVのCR-Vと変わらないが、水素タンクを搭載するためラゲッジスペースは狭くなってしまった。それでもフレキシブルボードを活用すれば、ゴルフバッグは3個(少し無理すれば4個も)積載可能だし、RVとしての使い勝手はかなり確保されている。

FCを生活にも活用するクルマとしては、このCR-Vのようなパッケージングが、今はベストとはいわないがベターなのかもしれない。FCのレアメタル回収など、リサイクルまで考えて当面はリース販売のみとのことだが、官公庁や法人だけでなく、個人向けのリースにも対応している。

水素の可能性の高さを再確認させてくれた、CR-V e:FCEV。この先はホンダだけでなく、トヨタなど他社との連携やインフラ充実などがFCEV普及のカギだろう。その魅力をより多くの人に届けられるよう、今後の開発・研究に期待したい。

ホンダ CR-V e:FCEV 主要諸元

●全長×全幅×全高:4805×1865×1690mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:2010kg
●モーター:交流同期電動機
●FCスタック最高出力:92.2kW(125ps)
●モーター最高出力:130kW(177ps)
●モーター最大トルク:310Nm(31.6kgm)
●燃料・タンク容量:圧縮水素・53L+56L
●バッテリー総電力量:17.7kWh
●一充填走行距離:約621km
●一充電走行距離:約61km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:235/60R18
●車両価格(税込):809万4900円(リース専用)

リサイクルの問題もあり、当面はリース販売のみだが、官公庁や法人だけでなく、個人向けのリースにも対応。
リサイクルの問題もあり、当面はリース販売のみだが、官公庁や法人だけでなく、個人向けのリースにも対応。    田中秀宣

記事に関わった人々

  • 執筆

    篠原政明

    Masaaki Shinohara

    1958年生まれ。某自動車雑誌出版社をめでたく? 卒業し、フリーランスのライター&エディターに。この業界に永くいるおかげで、現在は消滅したものを含めて、日本に導入されている全ブランドのクルマに乗ってきた……はず。クルマ以外の乗りものもけっこう好きで、飛行機や鉄道、さらには軍事モノにも興味があるらしい。RJC会員。
  • 撮影

    田中秀宣

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。

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