【目標タイムは給油時間!】日本初のEV向けバッテリー全自動交換ステーション

公開 : 2024.11.19 07:05

新たなエネルギー供給インフラの可能性を探るべく、ENEOSとAmpleが行う『EV向けバッテリー全自動交換ステーション』の実証実験。EVタクシーを多数有するエムケイの協力を受けながら、京都で行われています。『充電』ではなく『電池交換』が生み出すメリットとは? 編集部が直接訪問して取材しました。

日本初の実証実験を、京都で実施

ENEOSと、アメリカのスタートアップ企業Ampleが、日本初となる『EV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験』を行うというニュースが出たのは3月のこと。

MKタクシーで知られるエムケイホールディングスが筆頭協力先となり、京都府、京都市を始め多くの企業も参加するこの実証実験は、ENEOSがこれまでに培ってきたエネルギーの安定供給ノウハウと、Ampleのモジュール式蓄電池交換システム、そしてこれまでタクシー車両の電気自動車化に積極的に取り組んできたエムケイが、新しいエネルギー供給インフラの可能性を検討するというものだ。

一見、大型洗車機のような交換ステーション。設置面積が少なくてすむのも魅力だ。
一見、大型洗車機のような交換ステーション。設置面積が少なくてすむのも魅力だ。    平井大介

エムケイと言えば、2022年7月にヒョンデのBEVであるアイオニック5を、一気に40台も導入したことで話題になった。現在、同社の全タクシー840台中、182台がEVだという。自社で19の急速充電器を保有しており、ニチコンの50kWのものから、パワーエックスやイーモビリティパワー、韓国チェビの180kWのものまで、さまざまなタイプを使用している。

今後、さらに電気自動車の台数を増やしていくにあたり、充電インフラの運用面においてノウハウ獲得の必要性を鑑み、この実証実験に参加。ひいては将来的な事業化に向けて、課題の洗い出しを行っていくという。

目標はガソリン車の給油時間

実証実験が行われている場所は、京都市南区。エムケイの本社から徒歩3分ほどの通り沿いだ。そびえたつ白い四角の建物は、ちょっと大型の洗車機のように見える。

出迎えてくれたのは、Ampleのアメリカ人技術者。カリフォルニアから出向してきているのだという。そう説明してくれた、この事業のコンサルタントを務めるグロービング社の西本有里佳さんも、東京から京都に出向中だ。

ロボットのアームが支えている四角いものが交換用の蓄電池。
ロボットのアームが支えている四角いものが交換用の蓄電池。    平井大介

早速、四角い枠の中に、日産リーフを停車させる。どのように充電するのかとコードを目で探していたら、「充電ではなく、『電池交換』をするのです」と西本さん。従来のように充電ポートにコードを差し込んで充電するのではなく、すでに満充電になっている蓄電池を車両床下部に取り付け・交換するのだという。つまり、このリーフはAmpleの蓄電池を搭載しているのだ。ちなみに、蓄電池をAmpleのものに取り換える作業は、リーフの場合1~2時間で可能だ。

おもむろにクルマが上昇する。機械の床面が開口し、車体下にロボットが滑り込んでくるのが見えた。アームが伸びてリーフの車体から電池を外し、ポットに戻っていく。ポット内で充電された電池に持ち替えたロボットが、再び車体下に移動してきて取り付けを行い、交換が完了。このリーフには4つの電池を搭載しているので、この作業を4回繰り返す。所要時間は15分ほど。見慣れぬ光景、しかもいかにもロボットっぽい動きに高揚感があり、時間の長さは全く感じなかったのだが、西本さんは「本当は5分間で完了させたい」と話す。ガソリン車の給油時間がそのくらいなのだそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。
  • 撮影

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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